すさまじい繁殖力によって、あっという間にその一帯を葉とツルで覆い尽くしてしまう植物の「葛(クズ)」。
日本からアメリカへ持ち出され、アメリカで猛威をふるっている迷惑植物の葛について調査したので、分かったことを報告します。
葛の繁殖力が異常に高い理由
理由
- 夏の繁殖期には、1日に30cmもツルが伸びるほど成長が早い。個体差があり、葛の個体によっては1日に1mも伸びる。
- 地下にある根の部分(長さ1.5m、幅30cmの長いも状の塊根)にデンプンなどの栄養を貯め込む性質があり、その栄養を元にしてどんどん繁殖してしまう
- 根に蓄えた栄養によって、地上部分の植物体が枯死しても地下部分は生存し、越冬して翌年にまた生えてくる
- 地上の植物体を引き抜いたり焼き払っても、地下茎が残っているとそこからまた再生してしまう
- 他の樹木や草花に何重も巻き付いて成長するという葛の生態上、巻き付かれた側の植物が葛で覆われて光合成ができなくなって枯れ、その一帯が葛一強状態になってしまう
葛の塊根
アメリカへ輸入された葛が大繁殖して、超被害をもたらす
日本からアメリカへ輸入された葛がアメリカで大繁殖し、その一帯を葛で覆ってしまうことが大きな問題となっています。
スポンサーリンク
葛がアメリカへ輸入されたいきさつは、ルーズベルト大統領のニューディール政策の事業である「テネシー河谷開発(TVA)」で、ダム建設において土壌保全・水源確保のために、繁殖力おう盛な葛が利用されたからです。
葛は「世界の侵略的外来種ワースト100」の1つに指定されています。
- 葛が持ち込まれたアメリカの地域が運悪く年中温暖な気候だったせいで、葛が一年中繁殖してしまう(日本では明確な四季があるため、冬期に葛の成長が抑制される)
- 葛を食害することで葛の繁殖を抑制するタイプの昆虫が、アメリカには分布していない
- 日本では「竹」のようなすさまじい繁殖力をもつ植物が葛と拮抗しているせいで葛の占領が抑えられているが、アメリカには日本の竹に相当する植物が無い
- アメリカには葛を食用に利用する文化がほぼゼロなので、採取されることが無く伸び放題になってしまう
葛は食用に利用できないことはないけれど…
- 葛の塊根を掘り起こして砕いて精製し、デンプンを取りだして葛粉(くずこ)として利用する(葛粉は葛餅・葛切り・葛菓子などの原料になる)
- 春先から初夏にかけて伸びる新芽や花を天ぷらにして食用する
- 牛や馬やヤギなどの草食性の家畜の飼料になる
以上のように葛は食用や飼料に利用できますが、葛の根は地中深くに埋まっているせいで取り出すのが非常に大変で、しかも取れるデンプンの量も少ないため、どちらかというと無理をして利用しているというのが実際のところです。
ただし、葛の根を乾燥させた生薬の「葛根(かっこん)」は別で、飲むと身体をぽかぽかと温めて人体の免疫力を高める作用があり、風邪の初期には漢方の「葛根湯(かっこんとう)」が非常に有効です。
スポンサーリンク
非常に多くの薬剤師が、風邪の引き始めにはまず葛根湯を飲むことを推奨しています。
もしも庭で葛を発見したら、即刻除去を
植物「葛」の目印となる葉やツルの形
葛は地下茎によって地中へ広がり、地上部の植物体も短期間で大きく成長し、地表を匍匐(ほふく)したツルの地面との接触部分から根が生えて地面へ根付き、その繰り返しであっという間に庭を覆い尽くしてしまいます。
スポンサーリンク
葛の本体は地中にある塊根なので、地上からでは地下茎の位置・分布状況が把握できず、いったん繁茂してしまうと根絶は困難です。
子どものいたずらなどで葛の種子が庭へ持ち込まれたり、葛の植物体が庭へ挿し木されたりするとすぐに繁茂してしまうので、もしも庭に葛が生えているのを見かけたら即刻除去をしましょう。
- 葛の根元を掘り返し、葛の本体である塊根を除去する(この方法が最も除去効果が高い)
- 葛が生えている周囲へ除草剤を撒く
- 葛の地上部の植物体をひたすら抜き続き、葛の地下茎に蓄えられているデンプンを消耗させ続けて枯死を促す(手軽にできるが、地下茎が残っている限り再生の可能性はあるので葛の根絶効果は低い)
本ブログ推奨の、書籍や漫画の読み放題サービス
コメント