情報量の少ないあっさりとした絵柄なのにストーリーの流れの中で心に強く訴えかけてくる、イラストではなく漫画として非常に上手い絵。ショッキングで残酷な内容が多くても、話を余さず伝えるにはそういう部分も不可欠。
「寄生獣」や「ヒストリエ」で漫画家の大御所としての地位を確立した、岩明均(いわあき ひとし)の漫画や魅力を紹介します。
生命は重いのか軽いのかを考える「寄生獣」
男子高校生・泉新一は、正体不明の生命体に襲われ、右腕の中へと侵入されるが、とっさに右腕をひもで縛り上げることでそれ以上の侵入を阻止し、難を逃れる。
翌日、新一の右腕は寄生生物に乗っ取られていて、勝手にしゃべり、勝手に動くようになってしまった。右腕の寄生生物「ミギー」と新一の奇妙な共生生活がスタートする。
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その一方、世界各地へと出現した寄生生物は人間の脳へと寄生して身体と意識を完全に乗っ取り、人間に擬態し、人間達を捕食していた。
新一&ミギーは、社会にまぎれこんで人間を捕食し続ける寄生生物たちと相対するようになる。
岩明均の作品中で最大の知名度を誇る傑作です。
圧倒的な面白さや、人間とは異質な思考のパラサイト達との交流に興味が惹かれる。生命や、人間の存在についてあれこれ考えさせられる哲学的な漫画です。ミギーがかっこよくて可愛い。
ずば抜けた知能を生まれ持ち研究者としての側面をもつパラサイト・田宮良子や、
田宮良子
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複数のパラサイトを掌握して手足として操る最強のパラサイト・後藤さんなど、
後藤さん
敵側に魅力的なキャラが多いのが特徴。
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「寄生獣」は1993年に第17回講談社漫画賞一般部門で受賞、1996年に第27回星雲賞コミック部門で受賞するなど、高い評価を受けています。
岩明均の作風
- 物語の主人公が突然特異な力を手に入れ、そのことにとまどい、非日常の世界へ踏み込んでゆく、といった内容のストーリーが多い
- 「生きる意味とは何なのか」「他の種族の生命と、自身の生命に、重さの違いはあるのか」といった哲学的な問いかけがストーリー内容に含まれている
- 絵柄はあまり描き込まれておらず、少ない情報量であるにも関わらず、強い迫力がある
- ストーリーの展開上、残虐描写が頻出する
- 岩明均が遅筆家であることと、アシスタントを雇用せずに一人で作業するこだわりから、これまでに発表した作品数はあまり多くなかったり、長期的な休載に入ることが多い
岩明均の作品が好きならば、市川春子の漫画も生命について考えさせられる哲学的内容なので好きになれる可能性が高いです。
どちらの作家も、高品質で落ち着いた雰囲気の大人向け漫画が掲載される「月刊アフタヌーン」の人気作家で、作品のベクトルは近い。
アレクサンドロス大王に仕えた人間の物語「ヒストリエ」
紀元前4世紀、マケドニア王国のアレクサンドロス大王に仕えた「書記官エウメネス」を主人公にしている。
エウメネスは名家の子どもとして生まれるも、陰謀によって一時は奴隷の身となってしまう。
その後、エウメネスは時代の荒波に揉まれながらその才覚を目覚めさせていく。
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休載しがちでファンをやきもきさせているが、傑作との呼び名が高いです。
ブログ管理人が以前に古本屋でヒストリエをパラパラと読んでみた時は、どのページから読んでもぐいぐいと話に引き込まれてしまう強烈な吸引力がありました。
「ヒストリエ」は、2010年に第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の大賞を、2012年に第16回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞するなど、非常に高い評価を受けています。
歴史とSFが高度に融合したストーリー「七夕の国」
主人公の南丸は「念じると、対象の物体に小さな穴を空けることができる」という用途がよく分からない不思議な能力をもっていた。
南丸が通う大学の教授・丸神正美も同種の能力をもっていたが、こちらは卵程度の大きさがえぐり取られる、というもっと強力なものだった。
南丸家と丸神家のルーツである丸川町では、「人間の頭部の半分がえぐり取られたようになめらかに消失する」という奇怪な殺人事件が起こっていた。
南丸は、自身や丸神教授の能力との類似性を感じ、丸川町へと出向く。
全4巻と短いにも関わらず、異様に濃い漫画。歴史物からSF、ファンタジーまで、色々な作品ジャンルをまたいでいます。
「窓の外を見る」能力と「手が届く」能力など、あれこれ想像が膨らむSFホラー的な能力が登場。「本当のところはどうなの?」という最も気になる部分をあえて謎のままに終了させるなど、読了後もずっと心に残る作品。
その他、岩明均の作品
長編
「風子のいる店」
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短編集
「骨の音」
「雪の峠・剣の舞」
「ヘウレーカ」
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