原子力発電事故や、放射線に関する実験において、非常に有名で衝撃的な物体について調査したので分かったことを報告します。
原子力発電事故に関する、有名な放射線アイテム
「象の足(ぞうのあし)」
- 象の足とは、1986年にウクライナのチェルノブイリで起こった大規模な原発事故で、
原子炉内での核燃料が制御不能状態になり、「核燃料が高温によって溶けて、コンクリートや核燃料のシール材などと混ざって固まった物体」のこと - 外見が、動物のゾウの足に酷似していることから、象(ゾウ)の足と名付けられている
- 象の足は80Sv/h(1時間当たり80シーベルト)の放射線を発していると推測され、人間が近づくと放射線障害で短時間で死ぬため誰も近寄れず、
2020年の現代も、石棺された原子力発電所跡の奥地で超強力な放射線を放ち続けている - 象の足の状態を調べるために、遠距離から象の足をピストルで撃ち、マジックハンドで象の足の破片を回収したところ、その破片は緑がかった美しい結晶体だった
- この結晶体は「チェルノビライト(ウラン、ジルコニウム、ケイ素、酸素などから成る構造体)」と名付けられ、「チェルノブイリの宝石」という名前で呼ばれることがある
ロボットを遠隔操作し、カメラで動画撮影した「象の足」
東海村JCO臨界事故で、臨界反応を起こした「青く光る沈殿槽」
- 1999年9月、日本の茨城県那珂郡東海村にある株式会社ジェー・シー・オーの核燃料加工施設において、
正規の作業マニュアルから逸脱した不適切な作業工程のせいで、作業中に放射性物質が臨界反応を起こし、作業員が被曝して2名と死者と1名の重体者と、667名の被爆者を出した - 加工施設の現場では、加工にかかる時間を短縮して成果量を増大させるために裏のマニュアルが横行しており、
臨界反応が起こりづらい形状の貯塔を本来は使用するところを、冷却水ジャケットに包まれている沈殿槽(臨界反応が起こりやすい形状をしている)を使用していた- 濃縮度18.8%の硝酸ウラニル水溶液を沈殿槽へ入れる際に、沈殿槽周りの冷却水ジャケットが中性子反射体となり、臨界反応が起きてしまった
(事件の目撃者の証言では、バシッという音とともに、沈殿槽が青く光ったという)
- 濃縮度18.8%の硝酸ウラニル水溶液を沈殿槽へ入れる際に、沈殿槽周りの冷却水ジャケットが中性子反射体となり、臨界反応が起きてしまった
正規の作業マニュアルと、裏のマニュアル
臨界反応が起きた瞬間の、作業の様子
「死の灰」
- 死の灰とは、核兵器が爆発した後や原子炉内での核反応でできる、放射性生成物のことを指す造語
- 死の灰の構成成分は、ストロンチウム90やセシウム137などの、人体にいちじるしく有害な放射性物質が代表例
- 核兵器の爆発や原子炉での事故で空中に巻き上がった死の灰が、広範囲に降下することで、広範囲の土壌・地域を汚染する
- それに加えて、空気中の死の灰を呼吸などにより体内に取り込んだ人々に健康被害を及ぼす
放射線に関する実験での、有名な放射線アイテム
「デーモン・コア」
- デーモン・コアとは、
1945年、アメリカのロスアラモス研究所での実験で1人の死者を出し、
1946年、同研究所での実験でまた1人の死者を出した、いわくつきの「球状のプルトニウムのかたまり」の通称がデーモン・コア - 「デーモン・コア(球状のプルトニウムのかたまり)に、中性子反射体をどれくらいの距離を近づけると臨界反応が起こるか?」
ということを調べるために研究者が手動で実験し、結果として人的ミスで臨界反応が起こり、2名の研究者が放射線障害によって実験後すぐに死亡した - 本実験や本実験に使われたデーモン・コアは、人類史における科学実験の歴史上で屈指の狂気の存在として、ネット上や理系マニア達の間ではカルト的な人気がある
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デーモン・コアの実験の詳細については、本ブログでの専用ページ↓をご覧下さい。
歴史上で悪名高い、象の足やデーモン・コアなど放射線事件
歴史上でも特に悪名高い放射線関係の事件である、「チェルノブイリ原子力発電事故」から生まれた「象の足」と、多量の放射線で研究者の命を奪った「デーモン・コア」について調査したので、分かったことを報告します。 現在進行形で近づくだけで死に至る「象...
原子力発電に関する、有名な放射線アイテム
「ウラン鉱石」
ウラン鉱石とは、「閃ウラン鉱」「コフィン石」「燐灰ウラン石」「フランセビル石」などのウランを含む複数の種類の鉱石の総称です。
ウラン鉱石は、単一の種類の鉱石を指す名称ではありません。
ウラン鉱石に含まれるウランが壊変していきながらα線やβ線といった放射線を放っているため、
ウラン鉱石からは常に微量の放射線が放たれています。
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ウラン鉱石はそのままでは臨界反応(原子核分裂の連鎖反応が一定の割合で継続している状態のことで、臨界反応中は大量の放射線が周囲に放たれる)は起こしませんが、
たとえば、ウラン鉱山でウラン鉱石の採掘にたずさわるなど、大量のウラン鉱石のそばにいて過度の放射線を浴び続けることは非常に危険です。
ウラン鉱石が放射線を発生させる様子
「イエローケーキ」
- イエローケーキとは、ウラン鉱石からウランを抽出する際に、大部分の不純物を除いた後に出来る「全体のうちの70%~80%が酸化ウランである、黄色い粉末」のこと
- 粉末の集合体の外見が「黄色いケーキ」のように見えることから、イエローケーキと名付けられた
- 高重量でかさばるウラン鉱石よりもイエローケーキの方がはるかに運搬に適しているため、商業上でのウラン鉱の取引は、ほとんどの場合でイエローケーキを取引する
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イエローケーキが出来るまでの過程
- ウラン鉱石を破砕機で粉砕する↓
- 粉砕したものを、磁気・比重の違いなどを利用して選鉱(有価鉱物に富んだ部分精鉱と無価値の部分とにえり分けること)する↓
- ウランを多く含む鉱石を、濃酸(濃酸以外に、アルカリで処理するタイプの製法も存在する)で溶かす↓
- 液体中に溶解させたウランを、溶媒抽出法・沈殿法などの手法で回収する↓
- 回収したものを水洗した後に乾燥させてできる粉末が、イエローケーキ
その他、原子力発電に関わる、有名な放射線アイテム
- 「燃料集合体」
- 燃料ペレット(ウラン235を全体の2%~4%になるまで濃縮させた、セラミックスのこと)を細長い形状をした燃料被覆管に多数入れ、
上記の燃料被覆管を多数束ね上げたものが燃料集合体。
原子炉内において、燃料集合体に中性子を衝突させてゆるやかな核分裂反応を起こさせ、その際に生じるばく大な熱を発電に利用する。
- 燃料ペレット(ウラン235を全体の2%~4%になるまで濃縮させた、セラミックスのこと)を細長い形状をした燃料被覆管に多数入れ、
- 「ガラス固化体」
- 原子力発電を続ける過程で、燃焼効率が低下した燃料集合体は、使用済み核燃料に分類される。
使用済み核燃料を再利用するために処理した際に出る放射性廃液(使い道が無い危険なゴミ)を、ガラス成分と混ぜて固めたものを、ガラス固化体と呼ぶ。
ガラス固化体の製造直後は、表面では1500Sv/h(1時間当たり1500シーベルト)の放射線量を放ち、表面温度は200℃以上になる。
時間経過により、ガラス固化体が放つ放射線量と表面温度は減衰していく。
- 原子力発電を続ける過程で、燃焼効率が低下した燃料集合体は、使用済み核燃料に分類される。
過去にお店で販売されていた、危険な放射線アイテム
「核分裂反応を体験できる、世界一危険な子ども用おもちゃ」
- 「The Gilbert U-238 Atomic Energy Lab」は、アメリカで1950年~1951年にかけて販売された、
実験キットを使って核分裂反応を観測できる、子ども用のおもちゃ - 価格は49.50ドル(現代での通貨価値に換算すると520ドル相当)
- このおもちゃには、実際に放射線を放つ放射性物質が同封されていた
- α線を観測できる、ラジウムDとポロニウム210
- β線を観測できる、ルテニウム106
- γ線を観測できる、65Zn
- 放射線を放つ、4種類のウラン鉱石
- このおもちゃの実験キットを使うと、
ウィルソン霜箱の効果で放射線が通った軌跡を目視することができたり、
放射性物質がα崩壊する際のきらめきをスピンサリスコープを通して目視することができる
「The Gilbert U-238 Atomic Energy Lab」は、子ども達が放射性物質に触れて放射線の悪影響を受けることが危険視され、
発売後にまもなく生産中止になりました。
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