各種データをどんどん使い回すことができるので制作費が安く済む「CGアニメ」のメリット・デメリットや、
CGアニメがもつ可能性の高さについて調査しました。
CGアニメを制作することの、メリットとデメリット
CGアニメを制作することの3つのメリット
いちどキャラクターのCGモデルを作ってしまえば、あとは作画が非常に楽
ソフトウェアでキャラクターのCGモデルを作製した後は、
CGモデルの動作(腕を振ったり歩いたりジャンプするような動作)をソフト上で指定するだけで、アニメーションを作ることができるようになる。
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キャラクターの動作(腕を振ったり歩いたりジャンプするような動作)をひとつひとつ手描きで描く必要があり、非常に手間と時間がかかる。
過去に作った動作データを、何度も使い回すことができる
- 以前のシーン用に作ったCGモデルの動作データ(歩く動作のデータや、後ろを振り向く動作のデータなど)を、他のシーン用に再利用することができる
- ほとんどのアニメ視聴者達は、数話前の特定のシーンと今のシーンとでキャラが完全に同一の動作をしていたとしても、そのことに気付かない
- 動作データを使い回すことで、アニメの制作にかかる手間・人件費・時間が大幅に低減される
群衆・大量のメカのようなシーンでも、データを使い回すことで負担を減らせる
- 普通の手描きアニメでは、群衆のシーン・同じ形状の大量のメカが画面上で動いているシーンなどで、とんでもない作画の手間がかかる
- しかし、CGアニメなら、それぞれ細部を変更した人物達をデータとして画面上に配置したり、群衆の中の人物達に「歩く」「顔を上げる」などといった動作の設定をするだけで群衆シーンが出来上がる
- 大量のメカのシーンも、そのメカの3DCGモデルのデータをアニメーター達で共有して並行作業で動作の設定をしていけば、かなり簡単にシーンが完成する
よく言われるCGアニメの強みが、
「CGアニメの制作を続ければ続けるほど、使い回しができるデータ資産がどんどん蓄積していく」
というものです。
モブキャラクターのような重要度の低いキャラクターは過去の3DCGモデルのデータをそのまま再利用したり、細部を書き換えて別人物として簡単に再利用することができます。
「鳥」「馬」「猫」「犬」「魚」といった3DCGモデルは、別作品で、3DCGモデルの大きさの比率やテクスチャーなどを変更すれば、別物として簡単に使い回すことができます。
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上記はほんの一例であり、
たとえば過去に使用した動作データを別場面で使い回したり、
過去に作製したキャラクターの3DCGモデルをベースにして別作品の背格好が似ているキャラの3DCGモデルを短時間で仕上げることができるようになったりと、
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多くの場面で制作の労力が軽減されます。
CGアニメを制作することの3つのデメリット
既存のアニメに慣れ親しんでいる視聴者には、CGアニメはどうしても違和感を覚える
- 各シーンで、キャラクター達や風景が立体的に見えることが多く、2Dアニメとの違いを意識することが多くなる
- 各シーンで、キャラクター達の動作がみょうにゆっくりだったり、その逆に速すぎることが頻発する
CGアニメを制作するための「機材」「ソフト」などが高額
- 機材は、マシンにとって高負荷の3DCG作製ソフトをスムーズに動かせるだけのスペックを備えた、ハイエンドモデルのPC(30万円~50万円以上)が必要になる
- ソフトは、10万円程度の買い切り型のソフトか、買い切りができずに1年ごとに5万円~20万円以上の使用料を支払うタイプのソフトの、そのどちらかを用意する必要がある
- しかも、3DCGアニメを制作する社員の人数分、PCとソフトを調達する必要がある
CGアニメを制作するうえでの大きな難関が、「初期投資が高額」というものです。
さらに、場合によっては3DCG作製ソフトの使用料を1年ごとに支払う必要が出てくるため、ランニングコストもかかることになります。
「たった1回しか登場しないキャラ」「登場回数がわずかなキャラ」と相性が悪い
キャラクターの3DCGモデルをソフトウェア上で作製することには、多大な労力がかかります。
ただのモブキャラクター(無名の群衆キャラクターのこと)ならば、過去に作製したキャラクターの3DCGモデルの細部を変更して別キャラクターとして使い回せばOKですが、
「ストーリー上で重要なキャラクターであり、なおかつ、1回しか登場しなかったりごくたまにしか登場しない、という条件のキャラクター」
は、CGアニメとは相性が非常に悪いと言えます。
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CGアニメを作る過程の解説
アニメの各キャラクター達の3DCGモデルの作製
ステップ1「モデリング」
- そのキャラクターの素体(デザイン画通りの背格好をしている人体モデルのこと)
- そのキャラクターの顔・髪
- そのキャラクターが着ている衣服や、身につけているアクセサリー
- そのキャラクターの身体の各部分のテクスチャー(髪や服や肌の色合い・質感)
本項目では、上記のような項目をひとつひとつ作っていく
「Maya(業界で標準的に使われているソフトの1つである、3DCG作製ソフト)」などを使って、
アニメのキャラクターのデザイン画を参考にしつつ、キャラクターの3DCGモデルを作製します。
ステップ2「リギング」
- ステップ1で作製したキャラクターの3DCGモデルに、骨格・関節など(「ボーン」と呼ばれる)を設定する
- その部分の骨格・関節と、人体のどの部分が連動するかも、ソフトウェア上で細かく設定していく
- ボーンの設定を完了させた後、
3DCGモデルの動作を非常になめらかなものにして、なおかつ、動作をアニメーター達が直感的で分かりやすく操作できるようにするためのコントローラーの設定(これが「リギング」)を行う
この「アニメの各キャラクター達の3DCGモデルの作製」の工程は、
主に「モデラー」という職種の方が担当します。
3DCGアニメを制作することの最大のメリットとして、
「いったんキャラクターの3DCGモデルを作ってしまえば、あとはそれをグリグリと動かすだけでアニメーションを作ることができるので、非常に楽」
というものがありますが、
そのことを裏返して言えば、
3DCGアニメの制作における負担の大部分が「キャラクターの3DCGモデルを作製すること」に集中している、ということです。
精密な3DCGモデルを作るためには、高いスキルと、細々とした作業を延々と続けるための忍耐力が要求されます。
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3DCGモデルのキャラクターを使用した、アニメーションの制作
ステップ1「レイアウト」
- そのシーンでの、キャラクターの演技
- そのシーンでの、各種物体同士の位置関係
- そのシーンでの、背景絵
- そのシーンでの、劇中の演出
シーンごとに上記の事柄を決定し、シーンごとに設計図を作成する
ステップ2「アニマティクス」
- ステップ1で作成した設計図の通りに、キャラクターの演技・背景・演出などをラフに仮組みすること(この工程が「アニマティクス」)
- アニマティクスの結果が制作側のイメージ通りならば本格的な作り込みへ移るし、
イメージとズレているようならばステップ1「レイアウト」へ戻って不満足な点を修正する
- アニマティクスの結果が制作側のイメージ通りならば本格的な作り込みへ移るし、
この「3DCGモデルのキャラクターを使用した、アニメーションの制作」の工程は、
主に「3Dアニメーター」という職種の方が担当します。
3DCGソフトの基本的な扱い方を押さえていることはもちろん、
「カメラワーク」「レイアウト」など、映像方面での知識・スキルが要求されます。
上記のキャラクターの3DCGモデルの作製やレイアウト以外の部分は、
普通の2Dアニメの「企画」「声優によるアフレコ作業」などのアニメ制作の流れと、CGアニメの制作の流れとが共通しています。
次世代のアニメをになう大きな可能性がある、「セルルックCG」
セルルックCGとは、
3DCGモデルのキャラクターを作製したうえで作られたCGアニメでありながら、従来のセルアニメのように見えてCGっぽさが無いという、新しいタイプのCGアニメのことです。
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セルルックCGで制作されたアニメの具体例
アニメ「ブブキ・ブランキ」のPV
アニメ「蒼き鋼のアルペジオ-アルス・ノヴァ-」のPV
映画「HELLO WORLD(ハロー・ワールド)」の予告PV
セルルックCGでアニメを制作することの利点
- 「既存のデジタルアニメに慣れ親しんでいるタイプのアニメ視聴者」も、CGアニメを視聴したり商品を購入するようになる可能性が非常に高くなる
- CGアニメであるため、デジタルアニメよりも制作費が大幅に安くなる
- CGアニメならではの、人物や物体の動きを立体的でダイナミックに表現できることや、
「光や光線」「魔法的な現象を、画面上で光学的に表現すること」「爆発」「メカ・マシンの動作」「空から落ちてくる雨粒・雪」などといったCGアニメの得意分野の表現をアニメに盛り込むことで、
将来的にセルルックCGがデジタルアニメの上位互換になる可能性がある
セルルックCGアニメが、これまでのCGアニメと違っている2つのポイント
1「セルシェーディング」を駆使している
- 3DCGモデルに陰影をはっきりと付けることにより、アニメにおけるセル画に見た目を似せる
- 3DCGモデルのレンダリング(コンピューターグラフィックスで、物体に関する数値データの情報を計算して映像化すること)において、
使用する色数をわずか数色におさえることで、アニメにおけるセル画に見た目を似せる- 上記の2つの工夫によって、3DCGモデルが平坦なアニメ絵(色や影のグラデーションを単純化したタイプの絵)に酷似するようになる
- 3DCGモデルの陰影・色合いについて、アニメーターがデザインに協力することで、「セル画アニメのそれに近く、しかも見た目が美しい」という3DCGモデルを作り出す
セルシェーディングというレンダリング技法を用いることにより、
3DCGアニメにつきものの「人物や物体が立体的すぎること」「色合いが写実的すぎること」という問題点を克服し、
CGアニメがセル画調アニメに見えるようになります。
2「CGアニメでのキャラクターの動作を、セル画アニメのそれに似せる」
- 3DCGモデルのキャラクターをシーン上でグリグリと動かすと、
ダイナミックな動作を手軽に表現できるが、代わりに「見た目がいかにもCGっぽくて、アニメらしさが失われている」という事態になってしまう- セルルックCGアニメでは、
「むやみやたらに3DCGモデルのキャラクターを動かすことを、避けること」「デジタルアニメがそうであるように、キャラクターが動かないシーン(通称・止め絵)を意識的に増やすこと」によって、セル画調アニメに見えるようになる
- セルルックCGアニメでは、
セルルックCGはまだ歴史が浅い、出来たばかりの技法です。
たとえば、本記事の1「セルシェーディング」を駆使しているは各CGアニメ作品で当然のものとして為されていますが、
3DCGに強いアニメ制作会社のセルルックCGと、そうでないアニメ制作会社のセルルックCGでは、
セルルックCGの制作経験の年数の違いや、会社が擁しているモデラー・3Dアニメーターのレベルの違いから、セルシェーディングの出来具合に明確な差が生じ、
「3DCGアニメなのに、セルアニメみたいに見える」の度合いに大差がつくことになります。
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