大学の博士課程を出て博士号を取得したのに、不安定で低収入の職にしか就けないという「高学歴ワーキングプア」になってしまって絶望している人達が大勢います。
高学歴ワーキングプアという問題について調査したので分かったことを報告します。
「高学歴ワーキングプア」という現象の問題点
問題点
- 理系の契約期限付きのポスドクは月収20万がいいところという低収入。
文系の非常勤講師では週1コマしか講義ができないことがほとんどなので平均月収が2万5千円という薄給。 - 博士号を取得した人達がフリーターとして生きざるを得なくなることで、彼らの貴重な知識・技術が野に死蔵されてしまう
- 日本企業側に、高度な知識を持つ博士達を上手く使う能力・文化がほとんど育っていない
専門知識・研究能力を培ってきた博士を、「新卒ではない」という理由だけで企業が採用しないのは、日本にとって大きな損失であり、宝の持ち腐れといえる。
国立大学の学費や学振(博士課程者に支払われる給与)の一部には、国からの税金が投入されているので、国が投資してきた国立大学育ちの博士達や学振を、結局は無駄にしていることが多い。
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知識と能力がある博士課程卒を邪魔者扱いするような日本企業には、もったいないことをしているという思いを抱く。
予備知識:高学歴ワーキングプアとは
「高学歴ワーキングプア」
大学の博士課程を出て博士号を取得したのに、低収入&不安定な契約研究員や非常勤講師、フリーターとして生きることを余儀なくされること。
大学の世界に限らず、「その職の資格取得者を増やす」という国の施策によって、職の定員以上の数の資格者が発生し、その職に就けずにフリーター・無職へ追いやられる「弁護士」「公認会計士」「歯科医師」「薬剤師」なども高学歴ワーキングプアに含まれる。
高齢の高学歴は企業が求めている人物像とマッチしない
文系博士課程卒の問題
- これまで学士・修士・博士と延々と学んできた専門知識は、
メンバーシップ型(集団に所属するメンバーが、自己の役割を果たす事で集団に貢献すること)の日本企業では求められていない - 文系の博士課程へ進む人の数はとても少ないので、行く人には何か性格的問題があるのではないか、と企業側が不信感を抱く
- 公務員を目指すか、日本企業的体質をもたない外資系企業への就職を目指すしかない
理系博士課程卒の問題
- 生物系・理学系は、採用人数がほとんど無い
- ただでさえ博士卒を求めている企業が少ないのだから、
文系就職へ切り替えるべきなのに、研究職に就くことにこだわって自滅してしまう人が多い
文理共通の問題
- ポスドクとして生計を立てるも、35歳を境界線としてポスドクの雇用契約が急に困難になる(ポスドク35歳の壁)
- ポスドクやフリーターをしながら、論文執筆や学会発表などで実績を重ね、大学教員に採用してもらおうと奮闘していることが多い
- 博士号をもっているので賃金が高い・社会人経験に欠ける・実務経験が無い・高学歴なのでプライドが高くて扱いづらい傾向がある、
などの理由で、基本的に企業側は採用を忌避する - 博士号を取得できた年齢には、公務員試験の年齢制限に引っかかることが多い
- 以上の理由から、大学教員になったり企業就職をすることができず、フリーターとして生きることを余儀なくされる博士課程卒はありふれている
毎年1万人の博士が職にあぶれている
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- 日本政府の「博士の数を増やす施策」はそもそも間違いだった、と千葉氏は主張
- その理由は「モラトリアム期間をいたずらに長くしただけで、学生の将来のためにならない。人文系はアーティストといっしょで、ばくぜんとした夢を見るのは危険。自活していけなくなる危険もある」
- 安易に博士課程へ進もうとする学生や、その行為を助長する大学側に「修士課程までで、ある程度のことは学んだ、という区切りを付けることも必要」と警鐘を鳴らした
- 教員募集をしている大学に何十通も書類を送っても就職は決まらない。学生は「大学に残る」とよく言うが、自身の出身大学に残って教員就職するなんてことはほぼあり得ない。
(慶應義塾大学・高崎経済大学で非常勤講師を務める千葉雅也氏のお話)
毎年、約1万5000人が博士号を取得するのに対し、大学側の教員採用人数は5000から6000人。
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約1万人の博士は、大学教員の職に就けないことになる。
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