急激な経済成長と、10年位内に世界最大の人口の国になると予測され、
あれこれと注目を集めている国「インド」の社会問題について調査したので分かったことを報告します。
現代のインドの、8つの社会問題
社会問題1「現代のインド社会に大きな悪影響を残している、カースト制度」
インドのカースト制度における、5つの階級
カーストの最上位「バラモン」
僧侶・祭司の階級。
もっぱら祭祀・教法をつかさどる階級であり、
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インドでは社会において宗教が極めて重要なものであると扱われているため、宗教に従事するバラモンは他の階級から尊敬を受けていました。
カーストの二番目「クシャトリヤ」
王族・戦士の階級。
その国の政治・軍事を支配する階級。
カーストの三番目「ヴァイシャ」
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農業・商業にたずさわる、平民階級。
カーストの最下位「シュードラ」
カースト制度における、バラモン・クシャトリヤ・ヴァイシャに奉仕する義務を背負わされたとされる、奴隷的な階級。
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カーストに入らないインドでの最下層「ダリット(不可触民)」
インドの四種姓(ヴァルナ)制の枠外に置かれた最下層身分。
「葬式における死人の処理」「家畜の糞尿の処理」「食肉用にするための、家畜の屠殺」などの不潔・不快な仕事を押しつけられ、4つのカーストの人々から過酷な差別を受ける。
ダリットの身分を押しつけられた人々は約2億人に上ると言われている。
インドでカースト制度が成立していた理由
カースト制度が成立した理由の、「インドの歴史上の出来事」での側面
アーリア人(インド‐ヨーロッパ語族インド‐イラン語派の言語を話す人々の総称)が紀元前1500年頃にインドへ移住して先住民を支配した際に、
先住民を奴隷化し、アーリア人が自分達用に「バラモン」「クシャトリヤ」「ヴァイシャ」という上位階級を作ったことが、
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インドのカースト制度の始まりの起源とされています。
カースト制度が成立した理由の、「インドで広く信仰されている宗教」での側面
インド社会では、「宗教」の影響力が極めて大きく、宗教の都合上、カースト制度の根絶が困難である側面があります。
インドで広く信仰されている「ヒンドゥー教」では、「不浄な物・者に触れると、自身が汚れてしまい、自身の浄性が低下する」という考え方があり、
インドの人々の職業・居住地・社会での居場所を別々にして距離を取ることで接触を減らし、自身の浄性を保とうとする人が多いです。
インドのカースト制度が、現代のインド社会へ及ぼす影響
インドのカースト制度は、
紀元前1500年から西暦1950年(1950年に、インド憲法17条でダリットという不可触民制を禁止する法律が施行され、形式上はカースト制度が終わる)まで続き、
カースト制度には非常に長大な歴史があり、したがってインド国民の意識と社会制度に深く食い込んでいます。
- かつてダリットの身分を押しつけられていた人々への、現代でも根強く残る差別・暴力
- カースト制度での各階級の優劣が、現代のインド社会での「貧富の差」「職業格差」「その人物の社会的地位」に大きく影響していること
- 異なる階級間での男女の婚姻が難しい
などのような現代社会への影響を、かつてのカースト制度が及ぼしています。
社会問題2「自然環境と、水資源に関する深刻な問題」
- インドでは深刻な大気汚染状態にあり、WHOの調査では、世界で最も大気汚染が進んでいる15都市のうちで14都市がインドの都市であるとされている(2018年時点)
- 「大量の工場からの排ガス」「大量の自動車からの排気ガス」
- 農地での大規模な焼き畑によって発生する煙
- 「ディワリ(ヒンドゥー教における、1年の始まりを祝う祭り)」で、大量の花火・爆竹が街中で燃焼することによる煙
インドの大気汚染の原因は主にこれらが原因
- インドにとって非常に重要な水の供給源である「地下水」からの水の供給が年々減っており、インドでは近年中に危機的な水不足が実現する可能性が高いとされている
- インドでは降雨量が少ないせいで、水不足という状況が引き起こされやすい
- 経済の急速な成長にともない、国内でのゴミの排出量が急増している
社会問題3「多人数の貧困層が、インド国内に存在している」
- インドでの貧困層は1億7000万人以上、貧困率(所得が、その国の平均所得の半分にも満たない人の割合)は13.4%(2015年時点)
- この貧困層の人々は、インドのカースト制度でダリットの身分を押しつけられていた人達である場合が非常に多い
海外旅行でインドを訪れると、路上で生活している大人・子どもが本当にたくさん居ることに驚くことが定番だと言われています。
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社会問題4「インドでは、ニート状態の若者の割合が非常に高い」
- インドでは、15~29歳の若い層では30%以上がニートであるとOECDから報告されている(2017年時点)
- インドでは人口が急増しているが、国内での雇用の創出が人口増加のペースに追いつかない状況であり、そのせいで職に就けないニートの若者が大量に出てしまっている
社会問題5「インドでは、国に汚職が蔓延している」
- 「警察機関」「金融機関」「医療機関」「交通機関」「公立学校」などの機関で、汚職(金銭や物品を渡すことで不正行為を見逃してもらうこと)がひんぱんに発生することが、インドでは大きな問題になっている
- 世界の汚職を監視するNGO「トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)」によると、調査した国の中で汚職の発生率が最も高い国はインドだった(2017年時点)
社会問題6「衛生意識の低さから、街が不衛生すぎる状況になっている」
- インドでは自身の家にトイレが設置されていない家庭が多く、約5億6千万人が、習慣的に屋外で用を足していると見られている(2018年時点)
- 上下水道が十分に整備されておらずにトイレが詰まりやすい
- インドで支配的な宗教であるヒンドゥー教の宗教観からすると、トイレは不浄な存在であり、不浄な存在であるトイレを家屋内に設置したくない国民が多い
- 「街中では、ゴミはきちんとゴミ箱へ捨てる」という意識が低く、ポイ捨てされたゴミが街にあふれかえっている
インドでは街が不衛生な状態になりやすく、伝染病がまん延する大きな原因になります。
社会問題7「結婚における『ダヘーズ(持参金制度)』に関する問題」
- 男女の結婚において、女性側の家族は不利になる場合がかなり多く、そのせいでインドでは女性が軽んじられることが多い
- インドのヒンドゥー教では、花嫁側の実家が花嫁に持参金を持たせる制度(ダヘーズ)があり、十分な金額の持参金を用意できない場合、花婿側の家で花嫁が冷遇・迫害されることが多い
- 上記のように、インドでは「自身の子どもが女性である場合、将来的に高確率で不利になる」ため、
妊娠中の子どもの性別が女性と判明するとひんぱんに中絶したり、親の育児放棄によって女児が死亡する事件の頻発が社会問題となっている
社会問題8「名誉殺人」によって、女性が殺害されることが多い
- 女性が婚前交渉・婚外交渉を行った場合、そのことはインドでは「女性の家族全員の名誉をおとしめること」ととらえられるため、
女性の家族が当事者の女性を殺害(=名誉殺人、名誉を守るための殺人)することが頻発している- 「女性が暴行を受ける」といった不可抗力の場合でさえも、名誉殺人によって女性が親族に殺害されることがある
- インドにおいて支配的な宗教「ヒンドゥー教」では、異なるカースト間での婚姻を禁じているため、そのようなタイプの婚姻を結んだ女性・男性が親族に殺害されることが多い
インドでは伝統的に、女性は勉強・仕事をすることよりも家庭に入ることが優先されており、その傾向はインドの地方部・貧困層でとりわけ顕著です。
インドでは女性の権利が大きく制限されていることが、現代では問題視されています。
インドの経済成長に対して、インドの社会問題がおよぼす影響
インドの経済成長の見込み
インドのGDPの予測
2030年前後に、インドの名目GDP(GDPをその時の市場価格で評価したもの)が日本のそれを上回り、
アメリカ・中国に次ぐ世界第三位の名目GDPの数値に達するだろうと予測されています。
インドの人口予測
- 国際連合による予測では、2027年前後にはインドの人口が中国のそれを上回り、インドが世界最多の人口国となる
- 人口の多さが国の経済力の強さに直結しているため、近年中にインドは世界トップレベルの経済大国へ成長すると考えられる
インドの社会インフラの整備状況
- 「電力系統」「道路」「鉄道」「港」 などの社会インフラを、海外の国と技術提携することで急ピッチで整備している
- インドの社会インフラが整備されれば、国内での生産・流通がよりいっそう効率化されたり、海外企業がインドに参入しやすくなり、それらによってインド経済の成長が後押しされることになる
インドの産業の強み
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- インドではIT・ソフトウェア産業が非常に強く、
IT関連サービスで2000年には80億ドルの売り上げ額が2017年には1540億ドルにまで急上昇している - インドの「自動車製造業」「医薬品産業」なども、国際的な競争力が高い産業分野として注目されている
2018年時点で、インドではユニコーン企業(時価総額10億ドル以上の企業のこと)が14社もあり、
インドではこれからも巨大企業が続々と誕生すると見られています。
インドの経済成長に、インドの社会問題がおよぼす3つの悪影響
1「 カースト制度のなごり」によって、就職が不平等になりやすくなる
- かつてダリット(不可触民)の身分に押し込められていた人達が、就労において差別されて希望する職に就けない可能性が高い
- 就職以前に、カーストの下位の人々はそもそも教育を受ける機会を与えられないことが多いので、せっかくの「インドの、13億人を超える多人口というポテンシャル」が十全に発揮されない可能性が非常に高い
2「女性の労力が十分に活かされない」
インドでは、女性の権利・能力が軽視されやすい傾向があります。
そのせいで、インド国内での女性の労力の多くが死蔵されている状況にあり、
そのことはインドの経済成長の大きなネックになる可能性が高いと考えられています。
3「近い将来、インドで深刻な格差社会が形成される危険性が高い」
- インドではもともと、かつてのカースト制度の悪影響により、国の人々が階級によって分断されやすい環境がこのうえなく整ってしまっている
- 「インドではニートの若者が非常に多いこと」「インドでは識字率が70%〜80%程度であり、国民間での教育格差が大きいこと」などにより、格差の底辺側に落ちてしまう国民が多い
インドでは急速に経済が成長していますが、そのことは、
成長の波に上手く乗って巨万の富を形成する者と、成長の波に取り残されて格差の底辺側へ押し込められる者の二種類を生み出すことをいちじるしく助長します。
国民間で大きな格差が形成された場合、その国の治安が悪化して、国の基盤が揺らぐことへ繋がります。
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