アニメ業界が抱えている、6つの代表的な構造的問題について解説します。
問題点1「アニメーターの待遇がかなり悪い」
- 「監督」:648.6万円
- 「作画監督」:563.8万円
- 「キャラクターデザイン」:510.4万円
- 「原画」:281.7万円
- 「仕上げ」:194.9万円
- 「動画」:111.3万円
- 一ヶ月あたりの平均労働時間は262.69時間
- 「350時間超」と答えた人が15.9%を占めるなど、全体的に長時間労働をしている
「アニメーション制作者実態調査報告書2015」より
アニメーション用の絵を実際に手がけている原画担当(平均年収281.7万円)と動画担当(平均年収111.3万円)のそれぞれが、かなり低い賃金で労働を強いられています。
また、アニメ業界では描いた絵のリテイクが繰り返されるので、長時間労働が常態化しており、労働環境も悪いと言えます。
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加えて、アニメーターは「会社に正社員として雇用されている」のではなく「個人事業主(アニメーター)に会社が仕事を委託する」という扱いで働かされているので、正社員につきものの安定雇用や各種福利厚生が無いという状況です。
問題点2「アニメーターの、深刻な人手不足」
- アニメーターが激務薄給で働かされ、業界からやりがい搾取されているという事実が、ネットの口コミなどを通して暴露されてしまった
- 暴露されてしまったり、現場で実際にやりがい搾取されているせいで、アニメーターになろうとする人が減ったり、すぐに辞めてしまって、現場にアニメーターが定着しない
- 現役アニメーターの高齢化がいちじるしく、後継者がアニメ業界に入ってこなかったり業界に定着しない
- 有名な敏腕アニメーターは、好待遇で中国や韓国に引き抜かれてしまうので、そのせいで日本のアニメ制作現場がだんだん弱体化していく
アニメーターの手取りは1ヶ月で6万8000円
問題点3「アニメ業界は収益モデルに構造的欠陥を抱えている」
基本的に、アニメ制作費用が不足している
30分の長さのアニメを1本作ろうと思ったら、費用が2000~3000万円がかかります。
しかし、それに対してテレビ局から番組制作費としてアニメ制作会社へ下ろされる予算は、800~1200万円程度しかありません。
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赤字分は、後述する「製作委員会方式」で割り当てられるロイヤリティー(著作権の使用料)のお金でまかなうしかありません。
作品がヒットすればロイヤリティーは増えますが、作品が鳴かず飛ばずの結果ならばロイヤリティーは少なくなり、アニメ制作会社はお金が回収できずに赤字を被ります。場合によっては、赤字続きのせいで倒産してしまうこともあります。
「製作委員会方式」のせいでアニメ制作の予算上限が低く設定されてしまう
「製作委員会方式」とは、複数の企業(テレビ局や広告代理店や出版社などが実例)へ出資をつのり、出資金を集めてそれをアニメ制作へ回し、アニメが利益を上げれば出資比率に応じて利益を各企業へ分配する、という方式です。
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出資した企業は「キャラクターの版権」「テレビ放映」「海外展開」「関連書籍の出版」など、各種の権利ビジネスができるという利益を得ることになります。
製作委員会方式は現在のアニメ制作の場で主流になっています。
製作委員会方式の問題点は、
- 各スポンサー企業が「出資できる金額はそんなに多くは出せない」「だけど、出資比率では自社が大きな割合をキープしておきたい」という事情と思惑で動いている↓
- そのせいで、「このアニメの制作予算の上限は1億円!」という風に予算が低く設定されてしまうことが多発する(上限が10億円だと2億円を出資しないと20%の出資比率にならないが、上限が1億円なら2000万円という低額で20%の出資比率になる)↓
- スポンサー企業側の事情で予算が意図的に低く設定されているので、アニメ制作会社へ回るお金は少なくなってしまう
上記の内部事情により、各企業の出資によって集まった多額のお金を、
「1つあたり予算1億円で、10作品のアニメを作ろう」
と予算金を細かく分割するようになるので、アニメの粗製濫造が横行し、またアニメ制作会社は過酷な制作スケジュールを押しつけられることになります。
問題点4「アニメの原作が枯渇している」
- 漫画では3年分の連載分=アニメ1クール
- ライトノベルでは半年~1年分の出版分=アニメ1クール
上記のように、1クール分のアニメの原作量が3ヶ月分で生産できる量をはるかに上回っているせいでアニメを放送すればするほどアニメの原作消費に原作供給が追いつかなくなる、という現象が起こってしまいます。
2018年現在の時点で、90年代や00年代に発表された旧い漫画やライトノベルをアニメ原作として引っ張ってきていることが、すでにまともな原作が枯渇してしまっていることの何よりの証拠と言えます。
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問題点5「製作委員会方式ではオリジナルアニメは作りづらい」
上記の項目で解説した製作委員会方式では、出資した企業が利益を確保できるアニメ制作をすることが大前提となります。
そうである以上、ある程度以上は確実に売れることが保証されている人気原作を優先的にアニメ化することになります。
アニメ制作会社のオリジナルアニメは原作有りアニメよりも「作品の知名度」や「売れる確実さ」が劣るため、出資企業側の都合が絡んでくる製作委員会方式ではオリジナルアニメはどうしても作りにくくなります。
アニメ用の原作がすでに枯渇していてもオリジナルアニメ制作は忌避され、人気度が低いマイナーな原作がアニメ用に採用されてしまう、という状況におちいっています。
問題点6「アニメのBlu-ray・DVDがなかなか売れない」
アニメのBlu-ray・DVDの売上は、アニメ制作会社にとっての貴重な収入減です。
しかし、主要な購買層であるオタクは富裕層ではないので、なかなか購入してくれません。
(Blu-ray・DVDが1本5000円以上するのに、アニメが2話程度しか収録されていない、という割高感にも問題がある)
また、現代ではネット上にあれこれの動画サイトがあるため、そこへアニメ本編がアップロードされてしまって消費者がそれを閲覧し、アニメのBlu-ray・DVDが余計に売れなくなる、という非常にまずい状況におちいっています。
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