現代人が中世ヨーロッパ的な文明を築いているファンタジー世界へ転移・転生し、その異世界で現代知識を活用して無双したり、転移・転生時に神様のような存在から授かったチート能力で無双する、という「異世界転生モノ」が、現在ライトノベル分野で人気です。
そのようなタイプの異世界転生モノが現代で流行している理由を調査したので、分かったことを報告します。
1.「アマチュア達にとっては異世界モノは書きやすい」
- 既存の有名RPGから、世界設定や街並みや自然風景を借りてくるだけでそれらしいファンタジー世界を描写することができて、簡単
- 魔法や超常的存在が当たり前に存在するファンタジー世界なので、書き手側の力量不足のせいで生じる多少の矛盾は「ファンタジー世界だから」ということでごまかすことができる
- 時代小説やSF小説と違って、完全な異世界を描写する小説なら時代考証のような面倒で困難な作業が不要
- ファンタジー世界にすることで、中高生にとっては親しみ深いゲーム的設定(属性・スキル・レベルなど)も物語に組み込むことができ、話を理解しやすくなる
- 「剣と魔法とモンスターの異世界ファンタジー」という分野は昔から根強い読者人気があり、その分野を選択すればみんなに閲覧されやすいので、手っ取り早く人気を得たい書き手達に好まれる
異世界転生モノが増えた理由の大部分は、アマチュア達にとって書きやすかったり人気が出やすかったりで何かと都合が良いのが「異世界ファンタジー」という分野だから、というものです。
2.「異世界転生モノは読者を”接待”しやすい」
- 機械文明が発達している元の世界から、中世ヨーロッパ程度の文明レベルの異世界へ数々の知識を輸入したり披露することで、「主人公=読者の分身」が周囲に賞賛されたりちやほやされる
- 少女達にちやほやされることで、読者に人気のハーレム展開へも持って行きやすくなるというメリットもある
- 中世ヨーロッパ程度の文明レベルの異世界において、現代知識を上手く活用できれば、読者達が求めている「主人公の無双」「チート能力によって敵を圧倒」という展開へ自然に持って行ける
- 元の世界のあれこれの知識・現代の常識を披露するシーンで、読者達が「あるある」と共感したり納得するので、読者達にとっては物語になじみやすかったり没入しやすい
- 異世界へ転生・転移する際に神様的な存在からチート能力を授けてもらうことで、異世界で無双することができる
2018年現在、創作物の物語において「快」のみが求められ、辛くて苦しくて長ったらしい努力シーンや苦戦シーンや鬱展開は嫌われるようになっています。
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異世界転生モノは、「現代知識」や「チート能力を授けてくれる神様的な存在」によって主人公が物語当初から圧倒的優位に立ちやすい構造になっており、現代の読者達が求めている「快」の展開へ持って行きやすいです。
「快」の展開への持って行きやすさが、異世界転生モノが現代でもてはやされる大きな理由です。
- 消費者にとっての現実世界が格差社会化・貧困化・日本の国際競争力低下などで苦しいものになってしまっているので、創作物の世界でまで苦しい思いなんかしたくないし、現実が苦しいぶんせめて創作物の世界では良い夢が見たいから
- 上記のように現実の状況が厳しくて苦しいもののせいで、創作物の物語内での鬱展開に耐えられるだけの心の余裕が少ない・もしくは全く無い
- 消費者にとっては娯楽が多様化しているので代わりはいくらでもあり、読者にとってちょっとでも不快な展開や要素を含む種類の創作物はすぐにそっぽを向かれてしまうので、あらゆる創作物がひたすら「快」を提供する構造にせざるを得なくなっている状況だから
3.「異世界転生モノというジャンルは昔から高人気」
- 「古事記」「ふしぎの国のアリス」といった古典や、「十二国記」「ブレイブ・ストーリー」「デジモンアドベンチャー」などの近年の作品で、繰り返し「異世界へ迷い込む」「異世界へ召喚される」といった内容の物語が描かれてきた
- 昔から繰り返し異世界転生モノが生まれてきたことからも分かるように、異世界転生モノというジャンルの人気ポテンシャルは高く、そのことに加えて現代の読者のあれこれの需要に応えやすい構造だったので、大人気になるようになった
- 「嫌な状況の現実世界、嫌な状況の人生を、一度リセットしたい」「自分を苦しめてばかりの不快な現実世界から逃避し、楽しい異世界でちやほやされたい」という一部の読者の需要にも異世界転生モノなら応えることができる
異世界転生モノというジャンルはもともと高人気であり、定期的に大ヒット作が生まれてきました。
「アマチュアにとって書きやすい分野はどれだろう?」「読者を接待するのに適した分野はどれだろう?」と書き手が模索した結果、もともと高人気で構造的に都合が良い異世界転生モノというジャンルが選ばれ、流行することになりました。
もともと高人気なのだから、現代でふたたび大流行してもなんら不思議ではないと言うことです。
アマチュアの書き手と、異世界転生モノの密接な関係
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- 「現代人が中世ヨーロッパ的なファンタジー世界へ移動し、チート能力などで無双して周囲にちやほやされる」というタイプの異世界転生モノが流行した発端は、小説投稿サイト「小説家になろう」でアマチュア達が上記のタイプの異世界転生小説を書き始めたこと
- 「小説家になろう」のアマチュア達が書き始めた理由は、本ページで解説してきたように「アマチュア達にとっては異世界ファンタジーモノは書きやすいから」「異世界転生モノは読者を接待しやすいから」「異世界転生モノというジャンルは昔から人気だから」という理由による
- 「小説家になろう」発の異世界転生小説が人気を博し、漫画化・アニメ化などのメディアミックスを果たし、プロのライトノベル作家達も異世界転生ブームに追従して異世界転生モノを書き始め、今日に至る
インターネットが社会のインフラとして定着し、さらに、ネットをいつでもどこでも活用できるスマートフォンが国民的普及を果たしたことで、アマチュアの創作者達がネットへ作品を公開しやすい環境が整いました。
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本ページで解説してきたタイプの異世界転生モノが流行した根本的原因は、「アマチュアの小説の書き手達が、ネットを通して作品を発表しやすくなったから」というものです。
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