日本企業が技術者を軽視しスキルに相応のお金を支払おうとしないせいで、日本の技術者が冷遇されていることと、日本の有能な技術者が海外へ流出し続けている問題について調査したので、分かったことを報告します。
世界全土を比較すると日本の技術者の年収は低すぎる
- アメリカ(シリコンバレーエリア)は134000ドル(約1527万円)
- シドニーは81000ドル(約923万円)
- シンガポールは61000ドルで(約695万円)
- ロンドンは73000ドル(約831万円)
- パリは55000ドル(約626万円)
- 日本は444万円
HIREDが公開している「State of Salaries2017」より
技術者の一例として、ソフトウェアエンジニアの年収を挙げました。
他の分野の日本の技術者も、世界基準では年収が低い傾向があります。
日本という国が、技術にお金を出そうとしない4つの理由
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1.日本人の多くが「サービスされて当たり前」と思っているから
飲食店や小売店での日本ならではの懇切丁寧な接客サービスに慣れきっていたり、社員を当然のようにサービス残業で働かせていたりと、日本人は消費者側と雇用側に「他人にサービスされて当たり前」という意識が深く根付いています。
そのせいで、多くの場合で形をもたない「技術」「スキル」もサービスなんだから無償提供されて当たり前と無意識に感じているふしがあり、技術者へきちんと対価を払わないということが起こります。
2.企業での人事評価が根本的にダメな方向になっているから
その企業をより洗練させたいのなら「高い技術をもつ社員」「優れた成績を上げた社員」を最優先で出世させ、幹部に据えて企業のかじを取らせるべきです。
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しかし日本企業ではコミュ力・上司へのごますり能力・社内政治の手腕が優れた社員が出世するという企業文化があるので、優れた技術者はあまり出世できず、低い年収のままずっと冷遇されるという状況になってしまいます。
3.日本では解雇規制が強いせいで高いお金を支払えないから
アメリカのようにエンジニアの年収が高い国は、年収が高い代わりに社員の解雇が容易であり使えない人物はさっさと切り捨てることができる、という特徴があります。
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いざとなれば切り捨てることができたり、最初から任期付きの契約ということができるからこそ、最初から高い給与額でエンジニア達を囲い込むことができます。
それに対して日本は、実状はどうあれ法律上は終身雇用が義務づけられているので、ダメな技術者を長年抱え込んでしまうリスクを恐れ、高いお金を支払えないという特徴があります。
4.高いお金を払わなくても「愛社精神」でどうにでもなると思っているから
技術者に限らず社員全員について同じ事が言えますが、日本企業は給与の引き上げなどの待遇改善をしなくても「社員には愛社精神が備わっているから、辞めずに会社に残ってくれる。大丈夫」という楽観主義が残っています。
戦後の高度成長期からバブル経済期にかけての「きちんと対価が支払われていたことに裏付けられていた愛社精神」を、対価を支払わずに未だに要求しているふしがあります。
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日本が技術にお金や敬意を払わない、数々の現象
- プロのイラストレーターがSNSで「タダで絵を描いて」と頼まれてそれを拒否すると、SNS上でプロイラストレーターへのバッシングの嵐が起きる
- 漫画家、小説家、ミュージシャンなどの特殊技能をもつ人達が、
ごく低い割合の印税を支払われるだけで、出版社やレコード会社などの企業側に搾取され放題 - 大学院の博士課程を出た人物が就職先に困っていると、その人物を「自業自得だ」「自己責任だ」とみんなで嘲笑する
- 企業が、博士号を持つ人材の採用を忌避する
- 学歴が大学院卒の人材の年収が、学歴が高卒の人材の年収の2倍にも届かない
- 2015年度の日本の研究開発費総額は18.9兆円であり、中国のそれの半分程度しかない
- ノーベル生理学・医学賞を受賞をした山中伸弥教授ほどの人物が、
山中教授自らがマラソン大会に参加するなどのパフォーマンスをして寄付による研究費を集めざるを得ない - 経済成長が著しい中国や、大企業のサムスンが躍進する韓国に、高い年俸で日本の技術者が引き抜かれると、
日本企業の構造的問題を直視しようとせずに「愛社精神が足りない!」「愛国心が足りない裏切り者!」という声がいまだに続出する
現代は経済のグローバル化や、世界中の人達と交信できるインターネットの大普及で、以前よりも海外で働く事が容易な時代となっています。
資本主義の原理にのっとって高い賃金で日本の技術者を引き抜く海外の国々と、技術者・技術力の貴重さを軽視して待遇を改善しようとしない日本という状況が何年も続き、だんだん日本の有能人材がスカスカの状態になってきています。
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おまけ:日本から技術者が流出する様子を表した秀逸文章
技術者「グエー」
他企業「あ、ウチ48万出すよ」
技術者「行きます」
企業「まってくれ!君は大切な人材なんだ!行かないでくれ!」
技術者「だから?」
企業「…だから?…いや、だから行かないでくれ!」
技術者「…そう」行く
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