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小説家になろうのなろう小説が商業的に成功できた4つの理由

 

「小説家になろう」の小説作品や、サービス内容が、商業的に成功できた理由について調査したので分かったことを報告します。

 

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  1. なろう小説が成功できた、4つの理由
      1. 1「なろう小説は『今の時代の読者達の需要』に合わせて柔軟に変化できるから」
      2. 2「なろう小説は、スマートフォンやタブレットPCと相性が非常に良いから」
      3. 3「基本的に無料」という作品の性質が、今の時代にマッチしているから
      4. 4「なろう小説は、出版社側からすると書籍化するのに色々と都合が良いから」
        1. 小説家になろう公式サイトで、「現在の人気作品」を容易に見つけ出せる
        2. 人気のなろう小説はすでに大勢の読者・ファンがいるので、ある程度売れることは確実
        3. なろう小説なら、書籍化するにあたって宣伝費用が安くて済む
        4. 小説家になろうには書籍化を狙う書き手が大勢いて、出版社側はよりどりみどり状態
  2. 「なろう小説」と、「プロ作家が書くライトノベル」の関係
      1. なろう小説とライトノベルの、それぞれの読者層
        1. なろう小説の読者層
        2. プロ作家が書くライトノベルの読者層
      2. なろう小説とライトノベルの、それぞれの特徴・作品傾向
        1. なろう小説の特徴・作品傾向
        2. ライトノベルの特徴・作品傾向
      3. なろう小説とライトノベルが、それぞれが相手に及ぼす影響
        1. 参考:「なろう小説」と「ライトノベル」の市場規模の推移
  3. よくよく考えてみると、なろう小説の内容はそれほど批判できない
      1. なろう小説がよく批判されるポイント

なろう小説が成功できた、4つの理由

 

 

1「なろう小説は『今の時代の読者達の需要』に合わせて柔軟に変化できるから」

 

  • なろう小説の作者は、「小説家になろう」公式サイトでの作品評価(☆による5段階評価)の傾向と、作品に寄せられるコメントの内容の傾向から、
    作品の内容を読者達の意に沿うように変更しやすい

    • 作者と読者の、ネットを介した意思疎通が非常にスムーズに進むため、なろう小説は読者達の意見や需要を反映しやすく、
      今の時代の読者達の需要に合っていて人気が出やすい作品が生まれやすい

 

 

 

 

2「なろう小説は、スマートフォンやタブレットPCと相性が非常に良いから」

  • ネット上の「小説家になろう」公式サイトで、スマートフォンやタブレットPCなどで、各なろう小説を無料で読むことができる
    • オンライン状態のスマフォ・タブレットPCなどを携帯することが当たり前になった現代では、ネット上のなろう小説に触れる敷居が非常に低くなった
    • 多くの人達がスマフォ・タブレットPCでなろう小説を読むことで、なろう小説の面白さや良さが周知されるようになり、そのことがなろう小説が人気を博す大きな原因になっている

 

 

 

 

3「基本的に無料」という作品の性質が、今の時代にマッチしているから

  • たとえば、スマートフォンで遊ぶソーシャルゲーム(そのゲームの基本部分は全て無料で遊ぶことができ、もしもゲームを有利に進めたい場合は課金が必要)のように、
    「基本的に無料で、気に入ってもらえたらお金を支払ってもらう」という『フリーミアム』という名前のビジネス形態が現代では受け入れられている
  • なろう小説は、「小説家になろう」公式サイトで無料で作品を読むことができ、
    人気を博して書籍化されている作品でも、その作品の大部分(書籍版で加筆修正される前の文章や、物語後半は非公開であることが多い)を公式サイト上で無料で読むことができる場合が多い

令和時代の現代では、

「基本的に無料の、課金制」「一部無料」「月額定額で多数の動画や音楽を試聴し放題」といった、

消費者達にとって商品に触れる敷居がかなり低かったり非常にお得な販売形態でないと、なかなか商品が売れない、という状況になっています。




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無料のなろう小説や、書籍化したなろう小説は、上記の状況に上手く対応していて現代の消費者達に受け入れられやすい作品・商品形態であると言えます。

 

 

 

 

4「なろう小説は、出版社側からすると書籍化するのに色々と都合が良いから」

 

小説家になろう公式サイトで、「現在の人気作品」を容易に見つけ出せる
  • 作品の評価ポイントの数値で各作品がランキングがされているため、現在の人気作品を出版社の社員が簡単に発見できる
    • 出版社側からすれば、手間をかけずに人気作品の作者にアプローチができて、出版候補作品を探し出すのに非常に都合が良いサイトということになる
    • 出版候補作品を選び出すために、「小説の新人賞コンテストの開催」「受賞の賞金の用意」などをする必要もなく、非常に低いコストと短い時間で出版候補作品を選出できる

 

 

 

人気のなろう小説はすでに大勢の読者・ファンがいるので、ある程度売れることは確実
  • 小説作品を書籍化するにあたって、出版社側にとっての最悪の事態とは「売れない小説作品を、うっかり書籍化してしまうこと」
    • しかし、なろう小説の場合、ランキング上位の小説作品ならば固定的な読者・ファンがすでに大勢ついているため、書籍化したとしても彼らが本を買ってくれると予想される




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なろう小説なら、書籍化するにあたって宣伝費用が安くて済む
  • すでに人気を博しているなろう小説の場合、
    書籍化が決定したことを作者が小説家になろう公式サイトのプロフィール欄などで報告したり、出版社が公式HP上で告知するだけで、かなりの広告効果が見込める

    • たとえば、オタク系コンテンツに強いタイプの5ちゃんねるのまとめサイトで書籍化のニュースが取り上げられて、そのことで大きな宣伝効果が得られる

もともと、なろう小説はネットコンテンツであるため、ネットとの相性は非常に良いです。

本来ならば書籍発売の宣伝には多額の費用がかかりますが、まとめサイトやSNSによってタダで宣伝してもらえることは、なろう小説を書籍化するうえで大きなメリットになります。

 

 

 

小説家になろうには書籍化を狙う書き手が大勢いて、出版社側はよりどりみどり状態
  • 自身が書いたなろう小説が書籍化すれば、収入が得られたり作家としてちやほやされるため、書籍化を狙って小説を書いているサイトユーザーが、小説家になろうには大勢いる
    • 「最近、書籍化された複数のなろう小説」の作品傾向を大勢の書き手達が分析して、書籍化に適した内容の作品をどんどん書いてくれるおかげで、出版社側にとってはかなり有利な状況になっている
      • 「書籍化に適した作品群の中から、より売れそうな作品やより最新のニーズに適合している作品を選択できる」
        「その作品シリーズの人気と売上額が失速してきたらさっさと打ち切って、他の有望な作品を書籍化する」
        といった行動も可能になる

 




「なろう小説」と、「プロ作家が書くライトノベル」の関係

 

 

なろう小説とライトノベルの、それぞれの読者層

なろう小説の読者層
  • 「小説家になろう」公式サイトの読者達の年齢割合は2019年時点で
    20代が44%(最多)、10代が14%、30代が24%(10代~30代でほぼ8割を占める)、40代が12%、50代以上が6%(参考:「個人発サイトがエンタメ/出版業界を席巻する理由」)

なろう小説の書籍版は、ハードカバーの単行本である場合が非常に多く、価格は1冊につき1000円~1500円と文庫版よりもかなり高額です。




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そのため、上記の「小説家になろう」公式サイトの読者達の年齢層のデータと照らし合わせると、

収入があって経済力がある20代~30代がなろう小説の書籍版の主な購入層であると思われます。

 

 

 

プロ作家が書くライトノベルの読者層
  • 2018年時点で、ライトノベルの主な購入層は30代~40代という見解がネット上では一般的
    • 上記の購入層が10代であったころにちょうどライトノベルの黄金期が重なっているため、10代で積極的にライトノベルを購入していた人達が、30代~40代になってもライトノベルの購入を継続している、という見方が強い

 

 

上記のように、2018年~2019年の時点で、




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  • なろう小説の書籍版の主な購入層は20代~30代であると推定される
  • ライトノベルの主な購入層は30代~40代であると推定される

と考えられ、

なろう小説の書籍版とライトノベルの購入層は30代で被っているものの、なんとか棲み分けができていると評価できます。

 

 

 

 

なろう小説とライトノベルの、それぞれの特徴・作品傾向

なろう小説の特徴・作品傾向

 

  • 大多数の作品は、ストーリーや文章やキャラクターメイキングが稚拙である場合が多い
  • 出版社の編集者の目に留まり、書籍化がなされる作品は、一定水準以上のクオリティーを保っている作品であることが多い
  • 「読者達の願望を徹底的に充足させる内容であること」「変化・進化の速度がかなり早いこと」「無料で読めること」「インターネット環境に上手く適応していること」などが主な強み




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ライトノベルの特徴・作品傾向

 

  • プロの小説家が執筆した作品であるため、各作品のストーリーや文章やキャラクターメイキングの平均的な水準はかなり高い
  • 現状では、ライトノベルの新人賞コンテストで何らかの賞を受賞(競争倍率は賞のタイプによって50倍~100倍程度)した人しかプロのライトノベル作家になれず、極めて敷居が高い
  • 「普通のなろう小説では届かない、ストーリーや文章力やキャラクターのクオリティーの高さを維持していること」が主な強み

 

 

 

 

なろう小説とライトノベルが、それぞれが相手に及ぼす影響

なろう小説とライトノベルの主な違い

なろう小説プロ作家が書くライトノベル
小説作品の平均的な質低い高い
読者・消費者が作品に触れる敷居無料で読めたり、PCやスマートフォンで手軽に読めるので、敷居は低い読むためには購入する必要があり、敷居は高い
書き手の参入の敷居誰でも小説を公表でき、敷居は非常に低い新人賞を受賞しなければ商業作品を書けないので、敷居は極めて高い
書き手の数参入の敷居が非常に低いため、どんどん増える
(なろう小説界隈が活性化することにつながる)
参入の敷居が非常に高いため、数はあまり増えない
(ライトノベル界隈が停滞することにつながる)

 

 

本記事の「なろう小説とライトノベルの、それぞれの特徴・作品傾向」で解説したように、なろう小説とライトノベルは主に作品クオリティーの点において差別化ができているため、

どちらか片方が相手を完全に淘汰する、という事態はほぼ起こらないと考えられます。

 

ただし、ライトノベル的な内容(漫画やアニメのストーリーやキャラクターを小説に起こしたような内容であること)であるなろう小説と、ライトノベルは、極めて似通ったジャンルであるため、

なろう小説とライトノベルはそれぞれの購入層が被っている可能性が非常に高く、

片方が栄えると、もう片方が顧客を奪われたせいで勢力が衰える、ということはほぼ確実に起こります。

 




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  • 2020年現在の娯楽小説の読者達は、それほど凝った内容の小説は求めていない可能性が高い
    • 凝っていて高品質な内容であることよりも、「無料で気軽に読めること」「無料でできる暇つぶし用に適していること」「内容が平易で分かりやすいこと」「読んでいて、作中の快勝展開などで手軽に気分が良くなること」などを求めている場合が多い
    • もしも仮にこの予測が正しかった場合、オンラインで無料で読めるなろう小説は消費者達を呼び込む導線として多大な効果を発揮するが、
      有料であり凝った内容のライトノベルは現在の娯楽小説の読者達のニーズに合っていないため、ラノベ業界の衰退を余儀なくされる

 

参考:「なろう小説」と「ライトノベル」の市場規模の推移

なろう小説の書籍化数の推移グラフ

青:文庫・単行本の出版数 橙:なろう小説の漫画化版の出版数

 

 

 

ライトノベルの市場規模の推移

「出版指標年報(一般書籍)」の文庫カテゴリーのライトノベル部門の数字をもとに作成されたグラフ

 




よくよく考えてみると、なろう小説の内容はそれほど批判できない

 

なろう小説がよく批判されるポイント

  • 「主人公が事故死などをきっかけにして、異世界転生する」「異世界転生した後、チート能力などを活用して大活躍する」といった、画一化されたストーリー内容
  • 「レベル」「キャラクターのステータス情報の表示」「中世ヨーロッパ風の街並み」「勇者が魔王を倒そうとしている、お約束のストーリー」といった、RPGを強く意識した内容
  • 「主人公が周りからちやほやされること」「主人公が、美少女達から成るハーレムを形成すること」といった、読者の欲求を満足させることを重視した内容

 

ネット上でなろう小説が批判されるポイントは複数ありますが、

最もよく批判される点は

「90年代~2005年前後までの、高いクオリティーを誇っていた頃のライトノベルの内容と、なろう小説の内容が、かけはなれている」

というものだと思われます。

 

 

 

しかし、




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上記の高いクオリティーを誇っていた頃のライトノベルは、

J・R・R・トールキン著「指輪物語」のような本格ファンタジー小説の中の要素や一般文芸小説の中の要素を漫画的にアレンジして小説化したり、

当時のライトノベル業界で学園異能バトルモノがウケればラノベ作家達がこぞってそのジャンルの小説を書いたりと、

小説執筆当時に、作者達が子どもの頃に触れて育った作品・リスペクトしていた作品・業界で流行していてウケる内容に多大な影響を受けています。

 

現代のなろう小説の書き手達は、人気を博す大作RPGや、深夜アニメや、2010年以降に出版されたライトノベルや有名なろう小説に触れて育ち、それらの影響を受けてなろう小説を執筆しています。

「子どもの頃に触れて育った作品」「リスペクトしていた作品」「業界内でウケるので模倣した作品」の種類が時代の違いのせいでそれぞれ異なっているだけで、

過去のライトノベル作家達と、現代のなろう小説の書き手達は、お互いに執筆のスタイルが似通っていると考えられます。

 

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