大学院での博士課程を、企業に就職しないまま修了しまうと、ポスドク問題という深刻な問題に行き当たります。
ポスドク問題とは何なのか?調査したので、分かったことを報告します。
3つの主要なポスドク問題
1.期限付きの契約のせいで安定的な生活を送ることが難しい
ポスドク問題の中で最大の問題は、「ポスドクの雇用契約は、数年で打ち切られる」ということです。
しかも、契約更新しての雇用続行、ということもありません。
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このせいで、ポスドクの身でいる人が安定的生活を送ることが困難になり、「あと○年で契約が切られて、無職になってしまう…」という不安が常につきまとうことになります。
2.収入が低い
- ポスドクの平均月収は約30万6000円
- 最も月収が高かった分野は工業分野で、約33万円
- 人文・社会科学分野は約21万3000円と、収入格差が大きい
2007~2008年に文部科学省の科学技術・学術政策研究所がポスドクへアンケート調査
上記の調査では、約1000人のポスドクを対象にして行われましたが、そのポスドクの約8割が30歳を越えていたので、月収30万円でもそれほど高給とは言えません。
雇用での福利厚生面では、通勤手当が無い・健康保険が無いといった条件で働かされるポスドクも少なくありません。
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3.ポスドクのまま高齢化すると就職すら困難になる
ポスドクのまま35歳を越えると、助教のようなアカデミック職には年齢的に極度に就きにくくなってしまいます。
研究の道を断念して民間企業に就職しようとしても、企業側は35歳を越えた者を採用したがらず、また、公務員試験も「30歳まで」と年齢制限を設けていることが多いです。
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予備知識:「ポスドク」とは
博士課程を修了して「博士号」を取得した後、任期付きの契約研究員として研究の仕事をする人を「ポスドク」と呼ぶ。
一度は読んでおきたい、ポスドク問題を象徴する超名文
子供の頃から天才で東大に進む、その先も勿論エリートコース
↓
海外で初めての挫折、そこから研究室を転々とする万年ポスドク
↓
昔馬鹿にしていた同級生と海外で再会、同級生が既に家庭をもち幸せな生活を送っている様を見せ付けられる
↓
格差を見せつけられ狭いアパートの中で一人大泣き
の衝撃の文章から始まる、ポスドクの闇が明文化された名文。
エリートの書いた文章だけあって読み手の頭にするするとよどみなく流れ込んでくる、非常に読みやすくて良い文章です。
そしてその内容は心に突き刺さる残酷な内容。
日本という国では、ポスドクは活躍することが難しい
- 日本政府・日本企業が「技術」を重要視していないので、技術や知識を安く買い叩こうとしたり相応の対価を支払おうとしない
- 日本でポスドク制度が運用され始めてからまだ歴史が浅いので、ポスドクを十分に使う仕組みや企業側の受け入れ体制がまだ確立していない
- 1990年代から始まった国家主導の科学技術基本計画により博士が急増したが、その一方で大学の教員ポストの数や企業側の受入数は増えず、完全な博士余り状態になっている
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アメリカの研究室ではポスドクの活用文化が発達していて、研究室の中心的な働き手がポスドク達であり、ポスドクという働き方には展望があると言えます。
その一方で、日本ではポスドクの扱い方が下手であり、ポスドクという、価値がある存在を持て余しています。
日本ではポスドクして生きることは困難であることを自覚し、研究者として生きる道を断念するか、あるいは研究者を大事に扱ってくれる海外の国へ移住することをおすすめします。
アカデミック職に就くことは想像以上に難しい
- 大学院で研究と論文執筆を繰り返して「博士号」を取る↓
- 大学に籍を置いたまま、大学生相手の講座を担当して低収入生活をしつつ、研究したい分野について企画書を作成し、厚生労働省へ提出し、他の人の企画書よりも優れていたら予算がもらえる↓
- 研究して論文にして発表することを繰り返し、研究や自身の名前が日本や世界で有名になる↓
- どこかの大学の教員ポストが運良く空いたり(教授選挙で他者に勝つことが必要)、仲良くなった教授に大学へ招かれて、ようやく教員ポストに就くことができる
勉強や研究が好きで博士課程へ進み、研究がしたいから大学で教授になりたい!という人は多いと思われるのですが、世間に認められる研究を成し遂げるというのは容易なことではありません。
「ここにお宝が眠っているはず!」と3年くらい掛けて地面を掘っていても、結果分かったことは何も埋まっていないことだけだった…。こういうことが普通に起こるのが研究です。
教授になるには優れた論文を複数発表する以外にも、運良く空きのポストに滑り込めたということや、学会での政治的根回しのような能力も必要です。
一般に、博士課程まで進むと一般企業の就職は難しくなると言われがちなので、ポスドク問題や教授職に就く難易度を考えると、博士課程へ進むには大きなリスクを受け入れる覚悟が必要です。
2012年度の「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査」では、ポスドクの77.6%が次の年もポスドクを継続しており、次の年にポスドクから「大学教員」になれた者はポスドク全体のたった7.8%、という結果でした。
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