生命科学系の大学院生は「ピペット奴隷」「ピペット土方」と一部の人達から呼ばれてしまうことがあります。
ピペット奴隷、略して「ピペド」の事情について調査したので、分かったことを報告します。
ピペット奴隷の大きな2つの問題点
分子生物学や細胞生物学にたずさわる大学院生やポスドクを小馬鹿にして、ピペドと呼ぶ。教授や雇用主に奴隷のように扱われるので、ピペット奴隷と言われる。
ピペット土方と呼ばれるのは、マイクロピペットで吸ったり出したりする実験作業が、土や石を相手にする単純作業と同じだと言われるため。
1.使えるスキルが身につかない
スポンサーリンク
バイオ研究は機械化が難しく、手作業での研究を余儀なくされやすい。
マイクロピペットを使った実験作業は単純作業に近いものがあり、秀でたスキルを修得するのが困難である。
これに対して、他の分野である物理・数学・工学などは、修士まで出れば統計学・プログラミング・数学などの実用的なスキルが身につき、企業側からの需要も高くなる。
ピペドは専門性に欠けるため、企業側が研究職として雇いたがらなかったり、ポスドクなどの待遇で労働力を安く買い叩かれる傾向が強い。
2.バイオ系は就職先が非常に少ない
スポンサーリンク
生物・農学系の修士課程修了者の就職先となる、化学・食品・化粧品などのメーカー研究職は極めて狭き門であることが知られている。
文部科学省が発表している、平成26年度の「日本の企業の専門別研究者数割合」では、農学系は全体の2.9%、生物系は全体の1.3%しかない。
企業群が抱えている研究者達の中で、農学系と生物系の割合がそれぞれ2.9%、1.3%と、際だって低いことを意味している。
スポンサーリンク
このように、企業側がバイオ系の研究者を受け入れようとしないため、「バイオ系は就職難」「博士課程を出ても、企業に採用されて研究職に就く、という事が起こらず、ポスドクにならざるを得ない」という事態になる。
ピペドの就職活動にありがちなこと
ピペドの就職活動にありがちなこと
- 就職できた者は、専攻とは全く無関係の企業や、公務員になった、など。苦労して院を出た意義がほとんど感じられない。
- 「理学部の生物系」へ行ってしまった場合、通常の就職はほぼ不可能になる。かといってアカデミックポストに就くのも極めて難しく、半ば詰んでいる。
- 旧帝国大学の大学院出という高学歴でも、バイオ系は就職が厳しく、
同じ大学の他学部の就職先よりも数段見劣りした企業にしか行けない
ピペット奴隷が量産されてしまっている理由
- 「21世紀はバイオの時代」と喧伝され、それに騙されてしまった高校生が農学部へ進んだり、生命化学系の大学生が夢から覚めないまま大学院へと進学してしまっている
- 取っつきにくい物理を学ぶ工学系や、入学難易度の高い医学・獣医学・薬学・歯学部を避け、残った農学部へ進学してしまう理系学生が多い
- 生き物や、遺伝子工学が好き、という人がかなり多いせいで、自ら進んでバイオの道へ行ってしまう人が後を絶たない
- バイオ研究には「ピペット作業のような単純労働に従事してくれる人間達」が不可欠なので、
教授が労働力確保の目的で、学部生を院へ行くように勧めたり、修士生を博士課程へ行くように勧めることが多い
バイオ系専攻者は、修士でやめておくのが賢明
- その年に生まれた、全分野での博士の合計数を100人とすると、100人のうち30人は医師や大学教員
- 100人のうち20人は、ポスドクのような任期付きの非正規雇用
- 100人のうち16人は、進学も就職もできない無職
- 100人のうち19人は、会社就職・公務員など
- 100人のうち7人は、他の分野へ進む
- 100人のうち8人は、不明(進学や進路不明など)
このように、博士課程を出ても、ポスドクやアルバイトや進路不明のような不安定な道が多いのが、博士の宿命です。
上の項目ですでに説明した通り、平成26年度の「日本の企業の専門別研究者数割合」では、農学系は全体の2.9%、生物系は全体の1.3%しかありません。
社会からの、バイオ系研究者の需要は非常に低い、という事実を如実に表しています。
バイオ系の院生が就職するだけでも難しいのに、助教授や教授になって生計を立てる事を目指してポスドクを続ける、というのはなおさら無理な話です。
スポンサーリンク
実家がお金持ちで就職の心配は無いとか、学究心に人生を捧げたいという人ならば博士課程へ進んでも良いのでしょうが、「就職して自活したい」という人は修士課程までで止めておくのが賢明です。
本ブログ推奨の、書籍や漫画の読み放題サービス
コメント