映像作品の一種である「アニメ」の、最初の企画の段階から、最後の作品完成までのひととおりの流れについて調査したので分かったことを報告します。
ステップ1「企画」
- 原作付きアニメを作製する場合、原作の漫画・ライトノベル・一般小説・ゲーム・映画を選定する
- 製作予定のアニメ作品の「企画書」を作る
- そのアニメ作品を製作することの「狙い」
- そのアニメ作品のストーリーの概要
- そのアニメ作品の物語全体をつらぬくテーマ
- そのアニメ作品の放送予定話数
- 予算案
(一般的な深夜アニメの場合、
1話につき約2000万円の人件費や製作費がかかり、全13話で2億6000万円程度、
それに加えて宣伝費と放送費用が約4000万円かかる) - 製作スタッフの人選
などを決定し、企画書の中身を埋めていく
この企画書の出来次第で、アニメ制作に出資してくれるスポンサー企業を納得させられるかが左右されるため、
企画書の作成にはかなりの労力と優れたアイディアが必要となります。
ステップ2「アニメ作品の脚本の作成」
- 「各話の、それぞれのストーリー」
- 原作がある場合でも、アニメ作品側の都合によりストーリーや設定を多少改変したり、
オリジナルストーリーを設けることがある
- 原作がある場合でも、アニメ作品側の都合によりストーリーや設定を多少改変したり、
- 「各話での、具体的なセリフやストーリー進行の情報」
- 場面ごとでのキャラクターのセリフ
- 場面ごとでのキャラクターの周りで起こる出来事
- 場面ごとでのキャラクターの動作や画面効果などの、演出の大まかな指示
など
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たいていのアニメ視聴者達は、その話のストーリーの面白さに最も注目し、ストーリーの出来の良し悪しでそのアニメの評価を決定付けます。
したがって、アニメ脚本の作成は非常に難しく、責任重大な仕事になります。
ステップ3「アニメキャラクターのデザインをする」
- 「そのアニメでの、○○というキャラクターの見本の絵(頭身や表情の雰囲気なども細かく設定されている)」を、登場キャラクターごとに作る
- 「そのアニメでの、キャラクターが搭乗する巨大ロボットや、アンドロイドのようなメカ」といった複雑な絵の見本を作る
- 「そのアニメで使われる色の明るさ・暗さ・キャラクターや背景の色全体の雰囲気」という色合いの見本を作る
- この作業は「色彩設計」という役職の人が担当する
上記のような各種のデザインは、アニメ制作において「設定資料」と呼ばれています。
登場キャラクターの見本や、メカの見本や、色合いの見本を作る理由は、
アニメ作品は多人数のアニメーター達がそれぞれの手でアニメ画を描くため、1つの見本を元に絵を描かないと、絵柄や色合いに大きなばらつきが生じてしまうからです。
特に、銃器などの武器やロボットのような構造が複雑なものの絵は各人にとって絵の解釈がバラバラになりがちなので、細部まで細かく描かれた見本の絵をアニメーター達の間で共有し、絵柄を統一する必要があります。
ステップ4「アニメ作品の絵コンテを作製する」
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- ステップ2「アニメ作品の脚本の作成」で作った脚本を元にして、
そのアニメ作品におけるアニメーションのカメラワークやカット割りを各シーンごとに具体的に描き起こしていく - 絵コンテでは、
- そのシーンでのキャラクターのセリフ
- そのシーンでのキャラクターや背景などの構成の簡単な説明書き
- そのシーンでの効果音やBGMの指示
- そのシーンでのカメラワーク(どの角度・どのようなスピードで対象を描写するかの具体的指示)
- そのシーンを表現するための秒数
- そのシーンから別のシーンへ転換する具体的タイミング
などを細かく絵に書き込む
絵コンテは、まさにアニメ作品の具体的設計図と呼べる重要な存在です。
ステップ5「絵のレイアウトと、絵の背景を作製する」
- ステップ4「アニメ作品の絵コンテを作製する」で出来上がった絵コンテの構想を元にして、
そのシーンごとのカメラアングルや、画面に映る人物絵・背景絵などを調整しつつ、
完成図の設計を描く - 上記のことと同時に、「背景絵などの構図が確定した画面の中で、キャラクターがどのように動くか」を説明するガイドラインも作成する
- 決定された絵のレイアウトを元に、
背景画専門のスタッフにより、各シーンごとの背景(背景のみの絵であり、人物は描かれていない)がそれぞれ描かれていく
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ステップ6「アニメの原画と、アニメの動画を作製する」
「アニメの原画の作製」でやること
以前に作製された絵コンテを元にして、
そのシーンでのキャラクターの動作の起点となる、「最初のシーン」と「最後のシーン」の2つの原画を描きます。
これと並行して、「タイムシート」という、キャラクターのセリフとカメラワークの仕方の指示を書き込んだ書類を作成します。
この原画を描くのは、アニメーター達の中でも経験豊富なアニメーターの方々です。
「アニメの動画の作製」でやること
上記の最初のシーンの原画と最後のシーンの原画の、「その間をつなぐアニメ画」を大量に描きます。
アニメーションが実際に動いて見えるのは、大量に作製された「それぞれ、ちょっとずつ図が違う絵」が、パラパラ漫画の要領で連続しているためです。
ステップ7「アニメ画への色づけ」
- ステップ3「アニメキャラクターのデザインをする」で決まっていた、そのアニメ作品での色合いをもとにして、PCを使ってアニメ画へ色づけを行う
- 作製したアニメ画をスキャナーなどでPC上へデジタルデータとして取り込み、
専用の画像編集ソフトを用いて絵のパーツごとにクリック指示で彩色していくことで、
絵の彩色の手間を大幅に減らすことができる
- 作製したアニメ画をスキャナーなどでPC上へデジタルデータとして取り込み、
ステップ8「仕上げとなる、撮影」
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- これまでの各ステップで作製された「アニメの原画」「アニメの動画」「背景画」などの
アニメーションに不可欠な各素材を、1つにつなぎ合わせる- 現代ではPC上の撮影ソフトで、絵のデジタルデータを編集することで撮影の作業を行う
- まず「背景画」を一番下に置き、
その上に「アニメの原画」「アニメの動画」の人物画を置いて、
背景と人物を重ね合わせることでアニメーションフィルムにする
- ステップ6「アニメの原画と、アニメの動画を作製する」で作製したタイムシートの秒数を、撮影ソフトに入力する↓
- 撮影ソフトに取り込んだ「アニメの原画」「アニメの動画」「背景画」のデータを、上記の秒数設定によって連続的に動かすことでアニメーション動画にする↓
- 演出のための特殊効果を付与する編集作業をしたり、
実際にタイムシート通りにアニメーションに起こしてみて、変だと感じる部分やシーンのタイミングの修正や、
キャラクターがセリフをしゃべる際の口を動かす時間の長短を微調整する↓ - 撮影ソフトでの加工作業と修正作業が完了したら、完成版のムービーファイルとして書き出して保存する
ステップ9「声優によるアフレコ作業と、音響作業」
「声優によるアフレコ作業」でやること
これまでのステップで完成した無音のアニメーションを前にしながら、プロの声優達がアニメキャラクターの口パクに合わせて声の演技を行い、その声を収録します。
収録スタジオには、そのアニメ回に出演する声優達が一堂に会し、それぞれの声優達が自身が担当するキャラクターの演技を行います。
自身が発声ミスをしたり演技が下手なせいでリテイクが繰り返されると、順番を待っている他の声優達に迷惑がかかるので、声優達は強いプレッシャーのもとに演技を行っています。
また、アニメ作中で流れるBGMの作製を作曲家に依頼し、アニメBGMを用意することも行います。
同時に、アニメ作中で必要な効果音(銃声や破壊音やタッチ音など)を、道具を使って似た音を再現したり、シンセサイザーで似た音を作り、効果音を収録します。
ステップ10「ダビング作業」
これまでのステップで作製したアニメーション動画のデジタルデータと、
ステップ9で収録した声優のキャラクターボイス・BGM・効果音のデジタルデータを、
タイミングがぴったり合うように合成します。
最終ステップ「V編」
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- これまで作り上げてきた音声入りアニメーション動画の出来具合の最終確認
- 動画中にまぎれこんだ微細なゴミの存在
- キャラクターや背景の絵の色の塗り間違い
- 放送倫理に引っかかる過激な表現
などがV編で発見されやすい修正箇所
- 上記の最終確認でOKが出たら、製作者名や声優名などのクレジットが載ったOPとEDのアニメーションをアニメ本編の前後に付加する
- 動画の中に、キャラクターのセリフや作中状況を文章で説明するテロップ(字幕)を入れる作業
以上の作業によって完成したマスター用テープを録画し、テレビ局で放送するための納品用テープを数本録画することで、ついにアニメ製作作業は完了します。
あとはTV局側が、納品されたテープを使ってアニメ作品をTV放送すれば、作製されたアニメ作品が視聴者達に届けられます。
参考:「製作委員会方式」について
「製作委員会方式」とは、近年のアニメ制作業界で主流になりつつある、
「複数の出資者をつのり、彼らに多額のお金を出してもらう代わりに、そのアニメの各種版権を出資者達に分配する」
というアニメ制作の方法。
ステップ1「企画」の段階から、製作委員会方式によってアニメ製作が進められるパターンが多々ある。
出資比率が大きい出資者ほど、より美味しい権利を確保することができる。
- テレビ放映権
- 劇場上映権
- ネット上で配信する権利
- そのアニメの関連書籍を出版する権利
- そのアニメのキャラクターを使ったキャラクターグッズを発売する権利
- そのアニメを海外展開する権利
などが、出資者へ分配される代表的な権利
出資者は映画配給会社であることが多く、県や市(そのアニメでの地域振興効果を狙っている)であることも増えてきている。
参考:「CGアニメ」について
CGアニメ「ケムリクサ」のサンプルアニメーション
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趣味のアニメ0.9話です #ケムリクサ pic.twitter.com/OOxP9ax4lV
— たつき/irodori@ティア れ38b (@irodori7) 2019年1月2日
近年、深夜アニメを中心にして少しずつ数が増えてきているCGアニメ作品は、制作費や人件費が安いという理由で徐々に製作陣の注目を集めている。
CGアニメのメリット
- キャラクター達のCGモデルをいったん作製してしまえば、あとはPC上でモーションデータを入力するだけで、キャラクターの動きのアニメーションを作ることができる
- CGキャラクターの過去の動作データや表情データをバンクとして使い回せるため、作り手側の手間を大きく省くことができる
- たとえばアイドルアニメのような、複数のキャラクター達によるハデなアイドルライブシーンで膨大なアニメ原画とアニメ動画が必要な場合に、
アニメ本編とは別に、ライブシーンのみCGアニメで表現することで、アニメ製作側の負担をかなり低減することができることなど、CGアニメはあれこれ応用が利く - 以上のような理由により、手描きのアニメーションよりもCGアニメは人件費と製作時間がかなり少なくなる傾向がある
- アニメ製作にあたって大人数のアニメーターを集める必要が無く、少人数でのアニメ作りが可能なため、
CGアニメを作れる人個人の個性や趣味を反映した、独創的なアニメが生まれやすい
CGアニメのデメリット
- 既存の2DアニメとはCGアニメは見た目がかなり違っていて、視聴者達が「キャラクターの動きや表情が、なんか変」「安っぽい感じ」という否定的感覚を抱くことが多い
- 3DCGモデルを快適にいじくり回せるだけのハイエンドスペックのPCや、3DCGを編集する専用ソフトなど、CGアニメ製作には初期投資にかなりの額のお金がかかる
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