近年の漫画・ライトノベル・アニメでは「努力描写はNG、生まれ持った才能や神様に授けてもらったチート能力で苦戦せずに圧勝する」といった特徴がひんぱんに見られると、各方面から指摘されています。
漫画やラノベにおける努力描写の変化について調査しました。
作家が明かす「現代の読者は登場人物の苦境に拒絶反応を起こす」
- 今は、少年漫画でも、青年漫画でも、努力描写・特訓エピソードはあまり歓迎されない
- 登場人物の苦境シーンは、以前ならば4話は引っ張ることができたが、現代では4ページ続けるのが限界。そのせいで、読者が拒絶する努力描写や、下積み時代の描写はされなくなった。
- 努力型の主人公が世間でもてはやされていた風潮は、バブル経済後半期くらいから消え去っていった
- 「そのゲーム・そのシステムの仕組みを解き明かして、泥臭い努力をせずに、効率良く勝ち抜くストーリー」が近年は読者に好まれている。
例を挙げると、中学生男子の2人組が少年ジャンプで漫画連載をするというストーリーの漫画「バクマン。」では、漫画連載のコツや人気獲得のコツを研究して効率良く連載と人気を勝ち取る、という点が重視されていた。 - 人々の生活が変わると、それに対応して価値観も変わる。以前は努力型主人公が天才の敵を追い詰めるというパターンが好まれていたが、現代では天才型の主人公が秀才の敵を追い詰めるパターンも受け入れられている
作家・堀田純司氏のお話を要約
少年漫画で一番人気のワンピースでさえ「ほぼ努力抜き」
ワンピースで登場する「悪魔の実」は、食べると人間を超越した魔術的な能力を得られる作中アイテム。ただ、とんでもない稀少品なので手に入れられる者は少ない。
食べるだけで常人をはるかに超える特殊能力を手に入れられるので、「ワンピースの世界って、運よく強力な悪魔の実を食べた奴が強いってだけだろ」と批判されることもしばしば。
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さらに、ワンピースには新技習得の努力の過程が描かれることもほとんど無く、次の敵とのバトルでいきなり新技披露!という展開も多々ある。
ネットの意見でも「今の漫画には努力なんて要素は無し」
みんなが求めているものは「快勝」みたいなもの。
努力の有効性が信じられず、ウケが悪いから、創作物から努力描写が排除されていったんだと思う。
なので、努力描写を排除して「チート能力」「覚醒」みたいな展開ばかりになる。
「努力はしたくないけど、勝ちたい・モテたい・儲けたい」
といった魂胆の連中ばかりだから。
周りのキャラは主人公を神輿に担ぎ上げてもてはやすだけ。
敵は雑魚で、主人公の強さの引き立て役・無双している主人公のやられ役みたいに、主人公=読者が気持ちよくなれるように作られた世界の話。
泥臭い努力が報われるのは嘘だと冷静に見抜いていて拒絶し、
嘘くさい努力描写にだまされるくらいなら、いっそ最初から虚構だと分かりきっている
「才能で無双」「神様みたいな相手から授けられたチート能力で無双」
みたいな展開の創作物におぼれて快楽に浸りたい、ってとこだろう。
角川社長が語る「今のラノベの主人公像」が物議を醸す
- 売れるラノベの3つの要素は「ライトノベルの主人公は努力してはダメ」「ヒロインは都合良く向こうからやってくる」「能力は、勝手に身についている」
- 今のライトノベルの多くが、そのような要素を含めて書かれている
- 努力できる立派な主人公だと、読者が気後れして感情移入できない
- ライトノベルだけでなく、文学の分野でも、読者は「主人公に都合の良い物語」を求める傾向が進んできている
カドカワ株式会社代表取締役社長の川上量生氏へのインタビュー内容を要約
小説投稿サイト「小説家になろう」でもチート能力→無双がもはやデフォルト
小説家になろうの読者は「登場人物が努力・苦戦していると共感できない」と拒絶反応を起こすので、大した苦労もなくチート能力を手にして最下層レベルから一気に最強レベルになり、俺TUEEEE!・俺SUGEEE!主人公という作品が非常に多いです。
「漫画や小説の中でくらい夢見させてよ…」が本音?
日本人は真面目で根性論好きな国民性をもちますが、努力がもてはやされたのは戦後の高度成長期からバブルまでの間。努力しただけ結果になる時代なのだから努力が賛美されるのは当たり前。必然的に泥くさい努力モノが受けていたのでしょう。
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今のゆとり世代、その先のさとり世代は生まれたときから不況のまっただ中で、さらに経済格差まで起き始め、努力してもちっとも報われない…ちっとも上へ昇れない…という厳しい現実の中で生きています。そんな彼らに努力モノの漫画や小説がウケない・共感できないのも納得です。
漫画や小説は売上第一で作られているので、ウケない努力モノよりも、努力せずにチート能力で一気に最強!!という、若者の願望を代償的に叶えてくれる売れる作品ばかりが流行するのも当然でしょう。
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