フィギュアができるまでの、商品企画から一般販売までのひととおりの流れを解説します。
商品としてのフィギュアの、「企画」
「フィギュア化するキャラクター」の選定
- 「〇〇という作品(漫画やアニメやゲームが主)の、××というキャラクター」をフィギュア化する、という企画を書類上で作る
- 「今現在、世間で流行している作品」「世間での需要が高い作品」における人気キャラクターが、フィギュア化の対象になりやすい
- 「ライセンサー(キャラクターの版権をもつ企業・個人)」との、フィギュア化の交渉も必要になる
商品としてのフィギュアの企画を、具体的な形にする
- フィギュアのサイズ
- フィギュアのポーズ・表情
- フィギュアの価格
- フィギュアのリリースの予定時期
- フィギュアの予定販売個数
- フィギュアの販路
- これらを企画書にまとめる
フィギュアの、「原型の製作」
原型の製作工程
ポリパテを使ってフィギュアの原型を造る場合
- キャスト棒を使って、フィギュアの身体の骨格を組む
- 作った骨格に、ポリパテ(ポリエステルパテの略、ペースト状の素材)を塗っていく
- 「彫刻刀」「デザインナイフ」などの工具を使って、身体の細部を具体化していく
- ヤスリがけをして、表面をなめらかに仕上げる
PCを使ってフィギュアの原型を造る場合
1「3DCGソフトを使って、フィギュアの原型データを作成」
- フィギュアの身体(服を着ていない状態の身体)
- フィギュアが身にまとう、衣服
- フィギュアに付属する小物(フィギュアが手に持つ武器のような、ワンポイントアイテムなど)
- これらのパーツのそれぞれを、3DCGソフトを使って3DCGモデルとして作成する
- フィギュアの原型製作には、「ZBrush」という3DCGソフトがひんぱんに利用される
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2「3Dプリンターで、作ったデータを出力する」
- 1「3DCGソフトを使って、フィギュアの原型データを作成」の項目で作成したデータを、3Dプリンターを使って物理的な形にする
- 素材は、アクリル樹脂である場合が多い
- 3Dプリンターを使って立体出力するたびに、4万円(サイズが小さいフィギュア)~20万円(サイズが大きいフィギュア)程度のコストがかかるため、
3DCGソフトを使った原型製作もデメリットを備えている
・ソフト上のアクションだけで、左右対称造形がかんたんに実現する
・データの再編集(造形のやり直しや、部分的にいじって調整を図ること)が容易
・フィギュアのパーツ(腕や脚や頭など)を画面上で分離して、パーツごとに造形データの調整ができるので、細かい作業をするうえで非常に楽
といった点が挙げられます。
原型のリテイク工程
- フィギュア原型の、ポージング
- 360°の角度から観て、「完成度が低い部分」「人体の構造的に、破綻している部分」
- フィギュアの企画と、食い違っている部分
- これらの事項を、「プランナー」「フィギュアの制作ディレクター」が監修し、原型にリテイクを出したり、課題をクリアできたらOKサインを出す
- 「ライセンサー(キャラクターの版権をもつ企業・個人)」によるチェックもクリアする必要があり、ライセンサーからの意見・リテイク要望も原型に影響する
原型が完成した時点で、
上の画像のような形で各メディアへの露出が増え始め、消費者達からの注目度が高くなり始めます。
「複製」
数セット分、「複製」を作る
- 完成した原型を、パーツごとに分解する
- パーツごとに、液状シリコンを使って型取りする
(硬化したシリコンのかたまりの中からパーツを取り出せば、パーツの形をした空洞ができる) - 型取りしたシリコンの空洞へ、液状のレジンキャスト(合成樹脂の素材)を流し込む
- 温めることによって、液状レジンキャストを硬化させる
- 複製されたパーツ(硬化したレジンキャストで出来たパーツ)の完成
だいたい、
2~6セットの複製(塗装用・量産のための工場支給用・予備用、などの用途)を作ります。
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「デコレーションマスター(通称・デコマス)」
複製フィギュアに、彩色をする
- フィギュア化するキャラクターの印刷資料を参考にしながら、専門の職業人がていねいに塗装を施していく
- 面相(目・眉・口)の部分は、フィギュア全体像の中でも特に注目される部分であるため、塗装には高度な技術と豊富な経験が要求される
- 塗装が完了した複製フィギュアが「デコレーションマスター」と呼ばれる
「デコレーションマスター(通称・デコマス)」は、
フィギュア関連のイベント会場で、近い将来発売するための宣伝用・告知用にイベント展示されることが多く、
イベント会場で実際に目にしたり、イベント会場で撮影されてネット上へアップロードされた写真を目にしたりと、
フィギュアが好きな消費者達にとっていろいろとなじみ深い存在です。
参考:「デコマス詐欺」という現象が起こる原因
- デコレーションマスター(デコマス):将来の撮影・宣伝を見据えたうえで、専門職の方が1体のフィギュアをていねいにていねいに彩色したものであるため、クオリティーが非常に高くなる傾向がある
- 市販されるフィギュア:本記事の量産した各パーツごとに彩色をするの項目で解説するように、工員達の手によって量産体制で彩色されるため、デコマスよりもクオリティーが低下しやすい
歴史があって有名なフィギュアメーカーが発売するフィギュアならば、デコマスから市販品への劣化度は非常に小さくて済みますが、
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無名メーカー製だったり安価なフィギュアの場合は、デコマス詐欺が起こりやすくなります。
「デコマスフィギュアの、大々的な公開・宣伝・予約受付」
デコマスフィギュアを、プロのカメラマンが撮影
- 高度な撮影スキルをもったプロカメラマンが、デコマスフィギュアを撮影
- 出来上がった写真は、「フィギュアメーカーの公式サイトで掲載」「ホビー雑誌への掲載」「各ホビーショップでの、商品ページ用に掲載」などに使用される
フィギュアの予約受付の開始
- 「各ホビーショップでの、ネット通販の予約受付」「フィギュアメーカーでの、ネット通販の予約受付」を開始する
- 「あらかじめ販売個数を決めておき、その個数分が予約で埋まったら予約を締め切る」「特定の期間中に予約が入った数量分だけ、フィギュアを生産する」の2パターンがある
「フィギュアの量産のための、金型(かながた)の製造」
「型取りしたシリコン」「3DCGデータ」から、金属製の金型を製造
- 「型取りしたシリコン」(本記事の数セット分、「複製」を作るの項目を参照)
- 「3DCGデータ」(本記事のPCを使ってフィギュアの原型を造る場合の項目を参照)
- このいずれかの素材を元にして、フィギュアの各パーツごとの金型(金属製の型のこと)を製造
- 出来上がった金型でパーツを試作し(この試作品は、テストショットという名称)、クオリティーのチェックを繰り返しながら金型を何度か修正し、完成版の金型を作り上げる
金属製の金型は頑丈で耐久性に優れるため、
金型を活用することにより、同一規格のパーツを大量生産することが可能になります。
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「フィギュアの量産・塗装・箱詰め」
フィギュアの各パーツごとの量産
- インジェクション成形(溶融した樹脂(プラスチック)を金型の空洞に流し込み、冷却を経て樹脂を固化させてフィギュアパーツを成形する手法)で、フィギュアの各パーツを量産
量産した各パーツごとに彩色をする
- 数百人程度の工員による手作業(筆やスプレーなど)で、量産した各パーツを彩色する
- 工場の機械による特定部位へのプリント作業を、工員の手でスムーズに進める場合もある
彩色した各パーツを組み立てる
- 数百人程度の工員による手作業で、量産した各パーツを彩色する
- こちらの場合は、機械に頼らずに手と接着剤で地道に組み立てる
組み上がったフィギュアを、検品の後に手作業で箱詰めする
- 検品
- 完成品フィギュアを、プリスター(プラスチックトレイ)へセットする
- セットしたものを、取扱説明書といっしょに箱詰めする
「フィギュアの発売」
完成した商品用フィギュアを、各所へ配送する
- 本記事の「フィギュアの量産・塗装・箱詰め」の項目で完成した商品用フィギュアを、生産地の外国から日本へ輸入して、各所へ配送する
- フィギュアメーカーの会社(会社が直接ネット通販をする場合)
- 各種のホビーショップ(ネット通販でフィギュアを販売するほか、実店舗で販売することもある)
- Amazonのような、幅広い商品を取り扱うネット通販企業
参考:販売終了したフィギュアが、なかなか再販されない理由
- 本記事の「フィギュアの予約受付の開始」の項目で解説したように、フィギュア業界では受注生産体制が基本であり、最初に決められた個数分しかフィギュアを製造していない
- 本記事の「フィギュアの量産のための、金型(かながた)の製造」の項目で解説したフィギュア用の金型は定期的なメンテナンスが必要であり、保管しているだけでもろもろのコストがかかるので、可能ならば早く処分したい
- 本記事の「フィギュアの量産・塗装・箱詰め」の項目で出てきたフィギュアの生産ラインは、ふたたびいちから稼働させるためには多大な金銭と労力が必要であるため、なるべく再稼働させたくない
上記のリストのような事情により、
初回に市場に出回った数量分のフィギュアで販売打ち止めになるパターンが非常に多く、なかなか再販されません。
(ただし、再販しやすいタイプのフィギュアメーカーがあったり、高人気で高需要のフィギュアは再販されやすい)
このせいで、販売終了したフィギュアは「中古品」「転売屋が売り出している新品の高価格フィギュア」を買わざるを得なくなるため、
フィギュア界隈では、
「どうしても欲しいフィギュアは、予約開始後に即座に予約するのが鉄則」
「どうしても欲しいフィギュアは、予定生産分が全部予約で埋まる前に、即座に予約するのが鉄則」
と昔から言われています。
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